教育随想 95回 発言の基礎は 「○○は○○と考えていいですか」
今までに何度かお話ししたように、学習の最初にあるのは「わかりません」という子どもたちの意思表明です。
ただ、「わかりません」と言いなさいと先生が指示しても、簡単にはできません。
具体的にどうするかということを子どもたちの実態を通して考えていきます。
先生の指導技術は、参考書からではなく目の前の子どもたちの様子、事実をもとにして考えることです。そういう意味では、子どもたちは指導技術を生み出す宝庫です。
「わかりません」という言葉は大人でも簡単に言えることではありません。まして、子どもたちの年齢が上にあがるにつれて言いにくくなります。
低学年のときは「わからないわ」と素直に話せていたことができなくなります。
その理由は子どもによって違うかもしれませんが、先生の指導の仕方を見直すことが必要かもしれません。
「わかる」子ども、挙手する子どもを相手に学習を進めるからです。その中にあって「わからない」ということが罪悪のような印象を植え付けます。
「わかる人」は頭がいい、「わからない人」は頭が悪いという価値観が教室に流れます。
やがて、わからなくても「わかったふり」をすることを覚えます。
先生の話に相づちをうちます。発言は「同じです」という言葉を多用します。周りの子どもたちに同化しようとします。
二つ目の理由は、「わからない」ことで友達に笑われたり、先生の上から目線を感じたりすることで、その子どもの「わからなさ」は、心の奥にしまい込まれていきます。
「わからない」が言える訓練の場を授業の中で日常的につくるようにします。
実践1
「できるだけ多くのわからないを見つけよう」という場面をつくります。新しい単元の導入として使います。あるいは、資料や図を見て「わからなさ」をあげていきます。できれば、ノートに番号をつけて書かせます。
そして、わからなさを発表して黒板を埋め尽くします。
実践2
先生の指名。「わかる人、手をあげなさい」の禁止。「わからない人、手をあげなさい」
指名して、わからないことを発表させます。
「なるほど、あなたは、自分のわからないことを見つけることができる力があるんだよ」
「わからないはわかるための大切な入り口だよ」
子どもたちのわからなさを出発、あるいは、手がかりとして学習を進めることも必要です。
実践3
一週間から二週間だけ、わからなさノートに書いた数を競います。わからなさの数だけシールをはらせます。(名簿表を用意)
シールを使う指導は、教室においてしばしば使われます。使い方によっては意欲増幅の特効薬になります。
しかし、特効薬は副作用もあります。その副作用がでる前にやめるようにします。シールを使う目的、内容によってどのくらいの期間を使うかは違ってきます。
実践4
「わからない」ことを伝えるのに、とても小さな声で遠慮しがちに話す子どもがいます。
そのときには、先生がその子の机に足を運びます。そして、その子の話を聞きます。これは、先生がわからないことを大切に思っているよというほかの子どもたちへのメッセージです。
先生は、行動によって子どもたちに自分のメッセージを伝えます。
言葉による指導だけでは指導になりません。指示にすぎないです。
実践5
わからないことに対して、自分なりの予想や推察を付け加えられるようにします。
わからないなりに少しでもわかるところがあるはずです。
そのために、「○○と考えていいですか」という発言も取り入れていきます