教育随想(授業づくり・集団づくり・児童理解)

実践、反省、さらに実践・・・

子供たちを相手にして、悩んだり迷ったりしている先生に読んでいただきたいと思っています。
迷うことが、悩むことが先生の良心であり、最も大切な能力ではないのでしょうか。
 わかったことよりわからないこと、できたことよりできなかったことに 心を向けていく先生は 素敵だと思います。

教育随想  534回  3年国語教材「まいごのかぎ」 教材研究の最初 前半

教材研究をする場合、どの教科においても、まず、先生自身が自分の力で、一人の大人として、教材に向き合うことが大切だと考えます。
すぐに、指導書や参考書を読むのではなく、一人の大人として、自分自身がどのように感じたのかを素直に書きます。
そこには、子どものことは考えません
子どもを頭におくと、指導の研究になります。


今回、新しく導入された物語文「まいごのかぎ」について書きます。
初発の感想です。
私の拙い考え方、感じ方で作品をとらえます。
最初にとらえた私の教材解釈ですので、問題点も多くあると思います。
これから何度も作品を読み返し、修正していきます。
このことが私にとっては、とても楽しかったことです。


2回に分けて書きます。



第一場面 物語の始まり、まいごのかぎとの出会い


ぱりっとしたシャツのような夏の風がふきぬける爽やかな日。
それとは対照的に、うつむきがちにしょんぼりと歩くりいこ。


「またよけいなことをしちゃったな」


「よけいなこと」とは、どんなことなのだろうか。
「また」ということは、よくあることなのだろう。


図工の時間に、学校のまわりを写生していた時のことである。
「おとうふみたいなこうしゃ」が、りいこにとっては、さびしくみえたのだろう。
その校舎の手前に「かわいいうさぎ」を付け足した。
それを見て、友だちに笑われて恥ずかしくなったりいこ。
写生になのに、現実にそこにはいない「うさぎ」を付け足した。
これが「よけいなもの」なのだろう。


りいこの想像力から飛び出た「うさぎ」。
本当によけいなものなのだろうか。
りいこは、そのうさぎを消してしまった時、「うさぎに悪いことをしたなあ」と落ち込んでいく。
「ランドセルだけが、歩いているように見えました。」
りいこの気持ちもうつむいていく様子が伝わってくる。


「うさぎ」を消したぐらいで、そんなに落ち込むことなのだろうか。
「頭のなかにたしかにいたはずのうさぎ」は、りいこの豊かな想像力の結果である。
現実の世界を簡単に超えていくりいこの想像力。
それが「よけいなもの」なものとしてりいこは感じているが、果たして、そうなのだろうか。
物語「まいごのかぎ」はこうして始まる。



ガードレールの下で見つけた「まいごのかぎ」。
「夏の日をすいこんだようようなこがね色のかぎ」
「落とし物かな」と声に出すと、まばたきするかのように光ったかぎ。
このあたりから、ファンタジーの世界が始まる。
りいこは、落とした人が困っているにちがいないと考え、帰り道の方角とは別の海べにある交番に向かった。
りいこの優しい気持ちが(かぎをとどけようとする気持ち)ファンタジーの世界の入り口になる。


二場面 さくらの木のかぎあな


青々とした葉ざくらになった大きなさくらの木。
その根元にあるかぎあな。
「もしかして、さくらの木の落としたかぎだって」と想像するりいこ。
そのあとに「まさか、ね、」と思いながらかぎをさしこんでみる。
「まさか」と否定しながら行動はかぎをさしこんでいるりいこの好奇心、行動力。


「あっ」思わず、さけびました。
何におどろいたのだろうか。
木がぶるっとふるえ、みるみるたくさんのつぼみがついてきたこと。


「どんぐりだ」りいこは悲鳴をあげます。
頭の上に落ちてくるどんぐり。
「さくらの木にどんぐりの実がつくなんて」
あわててかぎをぬく。
桜の木はもとにもどる。


「びっくりした」
「こんなことになるなんて、さくらの木のかぎじゃなかったんだ」
「こんなことになるなんて」から、その時のりいこの様子を想像することができる。
ただ、疑問が残る。
「さくらの木のかぎじゃなかったんだ」ということは、
りいこは、さくらの木のかぎだとしたら、どうなると思ったのだろうか。
りいこの考えているかぎの持ち主とは。





第三場面  緑のベンチのかぎあな


緑色のベンチの手すりに小さな穴
「そんなはずないよ」
通りすぎようとしたが、ふと立ち止まってしまいました。
「でも、もしかしてー」と思いながらかぎあなにかぎをさすりいこ。
どこまでも自分の気持ちの欲するところに動いていくりいこ。


「わあ」ひっくり返りそうになるりいこ。
のそのそと歩きだす。
日だまりにねそべる
ねいきを立てるベンチ。


「ベンチのかぎでもないよ。歩くなんておかしいもの。」
ため息を一つついて公園をあとにしました。
ここでも、りいこはベンチがどうなったら、ベンチのかぎだと判断するのだろうか。


第四場面 あじのひもののかぎあな


「お魚にかぎあななんて。」
へんだと思いながらも例のごとく強い好奇心をもって行動するりいこ。
ただのあなではなさそうだ。
カチャッ。
小さなかもめみたいにはばたき始めるあじの開き。
想像しただけでも楽しくなる世界である。


あっけにとられる
全くりいこの予想外の出来事である。
ふわふわとうかびあがるあじの開き
ひものが飛び上がる様子、目に浮かぶ。


あわててとびつきかぎを引き抜く
「あぶない。海に帰っちゃうところだった。」
海に帰ると考えた りいこの楽しい想像である。
ところが
「やっぱりよけいなことばかりしてしまう」と悲しくなったりいこ。
自分の好奇心から出た行動がとんでもないことになるところだったと考えるりいこ。
ベンチやさくらの木の場合とは違う。
ひものをほしている人に迷惑をかけることになる。


桜の木、ベンチ、あじのひもの
あるべき姿をこえていく奇想天外なおもしろさ。
まいごのかぎは、そのことを教えている。
次回に続く

×

非ログインユーザーとして返信する