教育随想(授業づくり・集団づくり・児童理解)

実践、反省、さらに実践・・・

子供たちを相手にして、悩んだり迷ったりしている先生に読んでいただきたいと思っています。
迷うことが、悩むことが先生の良心であり、最も大切な能力ではないのでしょうか。
 わかったことよりわからないこと、できたことよりできなかったことに 心を向けていく先生は 素敵だと思います。

随想 926回 子どもの印象・表情に 関心をもってチェック

新学年に先だって、子どもの名前を覚えられる先生がおられます。
始業式の日にさりげなく子どもを見て、その子の名前を呼びます。
子どもたちは「えっ、ぼくのこと、知っているの?」と驚きの表情を見せます。
そして、「私は」「ぼくの名前を知っているの?」とせがむようになります。
サプライズを期待しています。
自分の名前を知ってもらえているというだけで、子どもたちは嬉しいようです。


私も何回か、実行してみたことがあるのですが最初だけですね。
方法としては、理にかなっているのですが、私は、それよりも子どもの姿、表情を自分の目の中に焼き付けることの方が大切ではないかと考えるようになりました。


児童観察記録の開始です。
簡単なもの、名簿一覧表があればいいです。
チェックできる程度でいいです。
最初から詳しい記録を目指すと継続がむずかしいです。
何を記録するかというと
① 印象の程度を◎ 〇 △の三段階に分けておく。
あくまで主観でいい。
印象に残った子どもに限るので、チェックが入らない子どもができる。
次の日に、その子どもを心において目を向ける。
こうして三日間にすべての子どもにチェックが入るようにする。
② 表情チェック。明るいか暗いかをチェックします。
あくまで印象として記入する。
二週間は継続する。
やがて、「なぜ、暗いのか」ということが気になってくる。
③ 言葉かけの記録
「散髪したね」「靴、買ってもらったんだね。なかなかいいよ」「おっ、今日は、服の色  を変えたね」など、子どもたちの姿に関心をもつ。
服装以外に言葉かけした内容を「散髪」「服黒色」「対話」など簡略化して記入する。
これ以外で、自分の視点を決めて記入します。
日替わりテーマの場合であったり、一つの視点で三日間、一週間と継続することもあります。


服の色で思いだすのが、一人の六年の女の子でした。
何ヶ月も上下、黒しか着用しない子どもでした。
「いつも黒色の服だけど黒がすきなんだね」と問いかけると「べつに、そういうわけではないけど」と、暗い表情を浮かべていました。


黒は、自分の心、想いを隠す色だと言われています。
明るい色を着ているのを一度も見かけたことがありませんでした。(2カ月以上観察)
私は、その子の内面が気になってきました。
やがて、家庭の問題があることがわかりました。
この子が明るい色の服を着てこれるように努力しなければと考えるようになりました。(家庭の問題には踏み込めない)
学校生活を楽しいものにすることで、どんなに家庭問題があっても、それを乗り越えられることがあるものです。
せめて、学校にいる時だけでも、楽しい思いを味わえるようにしたいと思いました。


その子どもは、六月の終わりごろに、初めて、ピンクの服を着てきました。
私は「かわいいよ。黒も悪くないけど。明るい色もいいね」とほめました。
先生は、子どもの変化にすぐに気づかなければなりません。
「昨日からきているよ」ではだめですね。



子どもの姿、表情は朝の観察から始まります。
1か月は、朝、一人一人出席をとります。
返事の明るさ、大きさなどその変化が重要です。
ほかの子に比べて、声が小さいと比べるのではなく、その子の昨日と比べてどうなっているかを意識します。


髪の毛の手入れ、顔を洗っているか、口もとの汚れ、襟がたっていないか、目のまわりの目やになど、家庭での生活がそのまま持ち込まれてくるのが朝です。
それらの事実から、家庭での生活を想像していきます。
一週間、同じ服をきている子どもがいます。
洗濯されていません。
親の子どもへの関心の薄さ、あるいは、保護者の忙しさなどを推測します。


「子どもを知る、理解する」と簡単にいいますが、難しいものです。
誤解、誤解の繰り返しのなかで、ほんの少し理解できるかなという程度です。
理解しているという傲慢さが怖いです。

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