教育随想(授業づくり・集団づくり・児童理解)

実践、反省、さらに実践・・・

子供たちを相手にして、悩んだり迷ったりしている先生に読んでいただきたいと思っています。
迷うことが、悩むことが先生の良心であり、最も大切な能力ではないのでしょうか。
 わかったことよりわからないこと、できたことよりできなかったことに 心を向けていく先生は 素敵だと思います。

教育随想 912回  卒業式 最後の指導 おかげ様の心

まもなく卒業式です。
6年生の先生方が中心となり、子どもたちに式の動きを指導されてきました。
「もっと顔をあげて歩きなさい」
「もっと大きな声で伝えなさい」
「礼をするときに背中が曲がっています」
「堂々と出場しなさい」・・・


何度も同じことを指導されてきたことと思います。
6年生は学校の顔といわれ、周囲からの期待を背負っています。
学年担当としては緊張します。


実際に6年生の卒業式を見れば、6年間の指導の結果として子どもの顔、態度に表れています。
子どもの思いが顕著にでます。
まして、卒業式当日は、多少、うまくいかなくても、気を抜いてもあとで担任から注意を受けることはありません。
子どもたちは、そのことを心得ています。
練習までは、真面目にします。
しかし、学校によっては、子どもたちの姿が練習の時よりもよくないことがあります。
歌や呼びかけの時に、自分たちの声のトーンを落としてくる子どもがいます。
担任や他の先生の指導から離れられる心地よさがあるようです。
私は、そのような卒業式を何度も見てきました。


卒業式のために、何度も形式的な練習を繰り返します。
子どもの心、意欲は膨らむどころかしぼんでいきます。
先生方は、見かけを整えようとします。
子どもたちは、そのことを知っています。


子どもたちの多くは、自力でここまで成長してきたと思いこんでいます。
親や先生、友達、地域の人々の支えがあって、「今の自分」があるという認識がありません。
そこには、「感謝の心」がないのです。
おかげ様の心」がありません。


卒業式に向けて、子どもたちに最後に指導すべきことは「おかげ様の心」です。
会場に入場する姿は、あなただけの姿ではない。
あなたを生かしてくれた、支えてくれた人々のおかげである。
そのことに感謝して、その人々に気持ちを伝えるべく入場するということ。
あなたは、入場の時にあなたを育ててくれた人々の喜びと期待を背負って入場するのですよ。
そして、歌や呼びかけを通して、あなたは伝えるのだよ。
「ありがとう」「おかげでこんなに成長したよ」
心のなかで、その気持ちをかみしめながら、会場のすべての人々に感謝の気持ちを伝えてごらん。
それが「あなたの卒業式」です。
名前を呼ばれて証書をいただくとき、自分の思いを「はい」という二文字にあらわしてごらんなさい。
先生もあなたたちの名前を呼ぶとき、「ありがとう」「はばたけよ」という気持ちで力強く名前を言いますね。


こうして、卒業式をして子どもたちを送り出します。
先生の卒業式は、翌日、子どもたちが登校していないことがわかったときです。
先生が残されたことを知ったときが先生の卒業式です。
さあ、新年度の子どもたちを迎える準備にとりかかろうと気持ちを新たにします。

×

非ログインユーザーとして返信する