教育随想(授業づくり・集団づくり・児童理解)

実践、反省、さらに実践・・・

子供たちを相手にして、悩んだり迷ったりしている先生に読んでいただきたいと思っています。
迷うことが、悩むことが先生の良心であり、最も大切な能力ではないのでしょうか。
 わかったことよりわからないこと、できたことよりできなかったことに 心を向けていく先生は 素敵だと思います。

教育随想 899回 3年国語「モチモチの木」学習指導(1)

筋の展開のおもしろさだけでなく、幻想的な情景描写、臆病でありながらとてつもない行動をやってのける主人公、語り口を生かした得意な表現などに児童の心をひきつけるおもしろさがある作品である。


 5つのまとまりで構成されており、方言、なまり、俗語などが効果的に使われている。
 また、符号「-」「・・・・」などが感情表現に効果的に使われている。


 前半の3つの場面では、豆太の臆病さやモチモチの木との関係、じさまのやさしさや豆太に対する思いが描かれている。
 後半では、 じさまを助けようと必死に奔走する豆太の姿が、短文でたたみかけるように緊迫した表現で描かれている。


語り手の登場
「まったく、豆太ほどおくびょうなやつはない。」と、話にならない臆病者と端的に示して、読み手を物語の世界にひきこんでいく。
この評価が後半の勇気ある豆太の行動を印象的に引き立てることになる。
しかし、一方では、豆太を励まし、慈しむじさまの気持を推しはかり、きびしい自然と生い立ちの中で、じさまの愛情を体いっぱいに受けている豆太に親しみと共感を寄せている。


後半では、大好きなじさまを救いたい一心で医者様を呼びに走り、かいがしく医者様の手伝いをする豆太に心を寄せて語り、読み手にも共感を呼び起こさせている。


このように、語り手の直接のはたらきによって、読み手は、いっそう物語の世界にひきこまれ、豆太の臆病さを笑ったり、時さまを助けるために医者を呼びにいく勇気にはらはらしたりして読み進めていくことができる。
※語り手と作者を同一視しないこと。
 語り手は作者がつくりだしたもの。


前半の読み
 作品の舞台を設定しておく。
 美しくきびしい自然に囲まれた峠のりょうし小屋である。
その中でじさまと豆太は、ふたりきりでひっそりとくらしていて、ねるふとんも一枚しかないという質素なくらしである。
ねるふとんが一枚、じいさまと豆太は、いつも肌のぬくもりを感じながら生きている。


じさまに甘えている豆太の様子、豆太をやさしく世話しているじさまの様子を描くことで、一人だからこそ、豆太に強く生きてほしいという願いがあっただろう。
この場面はあとの場面と対象的である。
じさまを思うやさしさが医者を呼びに行くという勇気に変わったことになる。
じさまへのやさしさは、豆太がうけたじさまの包み込むようなやさしさがもとになっている。


モチモチの木と豆太
豆太は、この木の実でつくったもちがおいしく好きなので、親しみをこめて「モチモチの木」と名前をつけた。
昼間は、モチモチの木に対していばり、夜は、反対に脅かされ、見ただけでしょんべんがでなくなるほと゜恐ろしい存在である。
自然との交流の中で、自然のもつ美しさや恐ろしさを体験しながら、豆太は成長していっている。


事件のおこり
 じいさまがころげまわるほどの病気になるというできごとは、この作品の大きな展開である。
これをきっかけに、臆病な豆太が、夜中にたった一人で、寒いのも怖いのもふりきって、医者を呼びに行く場面へと発展していく。


山場
 自分を温かく育ててくれたたった一人の肉親、じさまを助けるために医者を呼びに行く。
豆太のじさまを思うやさしさが、豆太を勇気ある行動に導いてくれたのであろう。
夜中の怖さよりもじさまの死の方がより怖いのである。


最後の場面
表面的には、しょんべんに起こすということは同じでも、豆太とじさまの二人の気持には大きな変化があるだろう。
一つの事件を通して成長した豆太と、そのことが何よりうれしいじさまが、人間のやさしさを基盤にして、前よりもいっそう強い愛情でむずばれた上での、豆太の甘えである。


作品の主題
①豊かな自然とじさまのやさしさに育まれた豆太の心の中には、いざというときには、勇気 となり、行動となってあらわれるやさしい心が育っていた。
②人間にとって一番大切なものは、やさしさであり、それが行動となって表れたときには美しいものだ。
③愛情をもってやさしく育てられた人間は、そのやさしさをもって人のために行動できる勇気が育っているものである。
 以上のことを呱々の子どもに強制しない。
 この作品は、子どもの体験や環境によって読み取り方が違ってくる。
子ども一人ひとりが自分の読みを膨らませていく学習にする。
決して、共通の課題でしめくくらないようにする。


単元目標
○臆病な豆太が大好きなじさまを助けるために勇気をだすことができるよになった様子や気持を考え、豆太の人柄とじさまのやさしさを読みとることができる。
.指導計画
 第1時  題名読みや全文音読を通して、作品に対する興味を高め、初発の感想を
        書く。
 第2時 初発の感想(心に残ったこと)を交流させ、場面ごとにもっと読み深めたい
       学習課題を話し合う。
       学習計画をたてて、学習の見通しをもつ。
 第3時 新出漢字や難しい語句を調べる。
 第4,5時 学習課題にそって一人学びをし、自分の読みをもつ。
 場面読み
 第6時 
「おくびょう豆太」の場面を読み、豆太の境遇や性格を読みとる。
 第7時 
「やい、木ぃ」の場面を読み、豆太のモチモチの木に対する昼と夜との気持の違いを読みとる。
 第8時 
「霜月の二十日のばん」の場面を読み、豆太の揺れ動く気持ちやじさまの
      思いを読みとる。
 第9時 
「豆太は見た」の場面を読み、夜道を一人で医者を呼びに行く豆太の様子や気持の変化を読みとる。
 第10時 
「豆太は見た」の後半部分を読み、モチモチの木に灯がついたところを見た
豆太の気持を読みとる。       
 第11時 
「弱虫でも、やさしけりゃ」の場面を読み、やさしさの意味を読みとる。
 第12時 自分の感想をまとめ、ポスターづくりの計画をたてる。
 第13時 一番心に残ったことをポスターにして表す。➡掲示

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