この教材は、難しい。
　道徳は、頭で割り切れても心では割り切れないものが多い。
　人間の真実は、揺れ動く心にあるから。

指導目標
新記録が出そうなことに夢中で，ストップウォッチのボタンを押し忘れてしまったことに悩む守の姿を通して，明るい心で生活するためには，どんなことが大切かについて考えさせ，自分の過ちに対して，周囲に流されず，強い心をもって素直に認めようとする判断力を育てる。
教材の価値をどのように見るか。
その価値のどの部分にスポットをあてて子どもたちに考えさせるか。

教材の分析
〇記録大会の時、守るはストップウォッチを押し忘れるという事実。
しかし、そこに至るには、守にとって理由がある。
①百回を越えたときのみんなの回数を数える声が大きくなる
②守はその声に思わず顔を上げる。
なぜ、顔を上げてしまったのか。
さらに、原因を考えると
③最後までみんなを応援するちかいをたてたから。

なぜ、そうしたか。
④守のアドバイスでクラスの記録がのびるたから。
⑤たくさんとべる方法をしらべたから。

そして、その始まりは
足をねんざして、大会に参加できなくなったことから始まる。
足をねんざした守がみんなのために役立ちたいという思い。
調べたりアドバイスしたりして記録を伸ばす。

みんなが百回を越えたときの声の高まりに
　　　　　思わず・・・とぶ姿を見るために顔を上げる
　　　　　　　　　　　　　➡ストップウオッチから目が離れる
　　　　　　　　　　　　　　★一瞬　時計係の仕事を忘れる。
そして、起こしてしまったミス。　　画面は3分３秒　3秒オーバー
ここで、「ごめんなさい」とミスを認めればよかった。

しかし、それができなかった理由がある。
新記録だと声を上げて興奮している仲間がいる。
友だちのことを考えると言いづらい。
さらに、自分のミスを正直に話すと、みんなから叱られるかもしれない。
正直な道を行くか　だんまりの道を進むか。

守は、ストップウォッチをゼロにした。
ごまかしてしまったのだ。
さらに、真理の言葉は守を揺さぶる。
「だまってていいよ。たった三秒だし」
この言葉は誘惑である。

しかし、守は自分の行為について
「でも・・・」と反省する。
その反省はさらに深くなる。
手のなかのストップウォッチがどんどん重くなるように、守の心も重くなっていく。

さて、守はこのあと　どうしたらよいか。
自分だったらどうするかという視点で考えさせる。
自分と守を対比させて考える。

子どもたちは考えるだろう。
たった3秒だからいいではないか。
スポーツで計測をごまかしてはいけない。
自分さえだまっていれば、みんなのためになるのでは。
その裏で、自分のミスをごまかしたいという心があるかも。

この教材は、難しい。
「正直，誠実」であることがよいのだろうが、実際の場面に出会うと、思わず「嘘」をつく。
そこに人間らしさ、弱さがあるように思う。
道徳は、頭で割り切れても心では割り切れないものが多い。
人間の真実は、揺れ動く心にある。

人間のリアリティを見つめることが大切であると考える。
したがって、子どもたちには、その時にどんな心がわいてくるかを出し合うことが大切である。
それを肯定するのではない。
しかし、否定もしない。
守のような状況のなかでは起こりうることだから。

指導の流れ
明るい心とはどんな心かを考える。
　　※子どもが明るい心にたいして、どのようなイメージを持っているかを発表させる。
・笑顔　よく笑う　にこにこ　素直
　嘘つかない　まじめ　正直　やさしい

課題　明るい心とは、どんな心か。
☛そのことを考えるために「長なわ大会の新記録」を読む。

① このお話は、どんなことが問題になっているのか。
➡守がストップウォッチをおしわすれたこと。

②どうして、そのことが問題になるのか。
➡守の行動に対する見解を出し合う。
だめだという考え　
まあ、しかたがない
★3秒についての考えの違い

□守はどうしてストップウォッチをおしわすれたのか。
□ゼロにもどした時の気持ちを考える。
　　　★なぜ、もどしたのか。
□真理に「だまっていていいよ」と言われた時「でも・・」のあとに言いたかったことはどんなことか。
　※揺れ動く守の心を想像させる。
※「いいよ・・・でも」のあいだで揺れ動く心を考えさせる。

□どんどん重くなっていくと感じた時の守の気持ちを考える。
守は、今後、どうすればよいかあなたのアドバイスを書く。。