教育随想(授業づくり・集団づくり・児童理解)

実践、反省、さらに実践・・・

子供たちを相手にして、悩んだり迷ったりしている先生に読んでいただきたいと思っています。
迷うことが、悩むことが先生の良心であり、最も大切な能力ではないのでしょうか。
 わかったことよりわからないこと、できたことよりできなかったことに 心を向けていく先生は 素敵だと思います。

教育随想805回  月の学習は ロマンを求める

 4年生の理科の学習に「月、星の学習」がある。
小学校の指導者にとっては、天文の学習はやりづらいものである。
多くが教科書や動画によって学習が済まされている。


「しらべましょう」「くらべましょう」「たしかめましょう」「きろくしましょう」と
観測主義で貫かれている。しかし、夜間の観察は難しい。
そもそも子どもたちにとって、太陽と比べてどのくらい関心をもっているのか。
月は日によって形が変わって見えても、子どもたちの精神的なものにどれだけ影響をもつものだろうか。


私は、理科の学習のなかで、月は人類にとってどのようなかかわりを持って
現在に至っているのかを考えさせてきた。
最古の文学「竹取物語」のなかには、月が大きくとりあげられている。
古代においては、街灯がつくまでは、月は地球を照らすあかりであった。
太陽が西のかなたに沈み夜がおとずれるとき、月は夜の世界を映し出す
大切なあかりであった。
なくてはならない光であった。
そこで、人々のくらしと月のつながりを考えてみることによって、科学としての月ではなく、人々がどのようにながめてきたかを振り返るような学習も取り入れた。


指導にあたって
科学はその対象から感情を削除することで発展してきた。
しかし、そのはじめにあるのは、人間の自然に対するロマンである。
しかも、月は電気のない世界にとって、なくてはならない自然のあかりであった。
実際の指導例 
めあて  昔から、人は月をどのように思ってきたのだろうか
月と人間のつながりを考えてみよう。
(1) みんなは月と言えばどんなことが思い浮かぶかな。
発表する。➡板書
昔の人たちは、月をどのように思っていたのだろうか。
ノートに書いて発表する。
なぜ、そのように考えたかを発表する。
      祈りの対象 癒しの対象  明かりの対象 占いの対象
※子どもたちの情緒的なとらえ方を強化する。


(2)ことわざや行事から考える。
「花鳥風月」・・・自然の美しい物
「月夜にちょうちん」・・・不必要なくらい明るい月
「月見」 すすき(稲穂)  だんご(子孫の繁栄)月のこと
 ススキは稲穂の代わり
※それぞれのことわざから人々は月をどのように感じていたかを捉えさせる。
これらについて子どもたちに十分に話し合わせるとおもしろい。


(3)先生の話として
 昔の人にとって、月は人間の命を宿すものであった。お祈りの対象である。
「愛でる」(めでる)習慣
満月の月明かりや・・・祭りや集会
満月の明るさを利用して人々は夜の活動を行っていた。
西洋人は日本人とは逆であった。 月を嫌う  狼男 満月の夜は不安


(4)月の呼び方を調べるとおもしろい。
月をいろいろな呼び方をして親しみをもっている私たち。
十五夜の月  おぼろ月・・ほのかにかすんだ月 夕月・・夕空に残る月
残月
他にも調べるとおもしろい月の呼び方に出会う。


ちなみに、秋の夜空に浮かぶ、美しい月をながめる「お月見(十五夜)。
今年の十五夜は、9月10日土曜日である。
子どもたちにも話してあげたいですね。
その時に、お月見の由来も添えてみます。


伝統的行事を調べることで、月が人々にとってどのような心のよりどころであったかを考えさせる学習をする。
もちろん、そのあとで、理科の学習を実施。
子どもたちは、すでに月に対する見方が変わる。
変化する月をながめる人々の気持ちなどにも気づく。。
科学は、自然に対するロマンから生まれたものである。

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