教育随想(授業づくり・集団づくり・児童理解)

実践、反省、さらに実践・・・

子供たちを相手にして、悩んだり迷ったりしている先生に読んでいただきたいと思っています。
迷うことが、悩むことが先生の良心であり、最も大切な能力ではないのでしょうか。
 わかったことよりわからないこと、できたことよりできなかったことに 心を向けていく先生は 素敵だと思います。

教育随想 80回   聞くことは、話し手の再生活動から



「聞く」ということは、相手の心の中に入ることです。
「聞く」ということは、相手と打ち解けることです。


話し手は、言葉という電波に乗せて、自分の気持ちを聞き手に送ってきます。
聞き手は、電波に乗せられた話し手の意図や想いをくみ取ります。


回転ずしのぐるぐる回るレーンがありますね。
レーンが言葉で、皿の上の寿司が意図であったり想いであったりします。
レーンから寿司を取り上げるとき、ぼうっと見ていると取り損なうことがあります。
話し手の意図をくみ取るとは、皿の上の寿司を取って自分の前に置くことです。


ただ、寿司の場合は、初めから自分の好みが決まっています。
自分の意図されたことだけを拾い上げますから、他のものは目の中に入りません。
聞き手の主観、思い込みで話し手の言葉を聞いています。
聞き手の都合で話し手の言葉、その内容を選択、いや、切り捨てています。
日常生活における私たちの普通の聞き方ですね。


だから、子どもたちへの聞く指導は難しいです。
子どもたちは、言葉を頭の上で聞き流します。
耳に流れ込んできた言葉も、自分の都合で取捨選択します。
先生の言葉も友だちの言葉も聞く必要感がありません。
私たち大人もあふれる情報を、自分の好みと都合で耳に入れています。
子どもも同じです。
それでも、子どもたちは、先生が話すから、先生が見ているから仕方なく聞いているにすぎません。


聞く指導のむずかしさはそこにあります。
聞いているかどうかは、子どもたちの内面でおこっていることであり、外からは見えないことが多いものです。
だから、聞いているふりをすることができまとめてす。


聞く指導は追い込むことも必要です。
追い込むというのは、条件設定をすることです。
条件設定をして、子どもたちがあいまいに聞かないように周りを固めることです。
そうでないと、「みんな聞こえましたか」「はーい」という、言葉で伝えたことが言葉だけで返ってきます。


聞いたかどうかを言葉で確かめてはいけません。
表情から察知できる部分もありますが、それは、すべてではありません。
「がんばりなさいよ」「はーい」
「わかりましたか」「はーい」
「静かに自習できますね」「はーい」
「人には親切にするのですよ」「はーい」
という言葉だけの教育が行われます。
子どもたちができていないと、先生は「前に話しましたよ」と子どもたちを責めます。
言葉で教育したことは、言葉でしか返ってこないということです。


さて、聞く指導の具体的なことについて話します。
以前に、分かったことを子どもたちに発表させて、それぞれのわかり方が違うということ、そのあいまいさに気付かせる指導についてお話しました。


今日は、ペアを使って、子どもたちを指導します。
ペアによる指導例
ペアで話し合いをさせます。簡単な相談から始めます。
「昨日は、どんな遊びをしたか」「朝食で何を食べたか」
「絵を見てわかったことを一つ言いなさい。」などの課題を設定します。
短い言葉で発表できるものがいいでしょう。
ペアで自分の意見を発表するのではなく、ペアの相手の意見を発表させます。
「○○さんの感じたことは」「○○さんま遊んだことは」など、お互いにペアの代弁者になります。
授業の中で活用します。全員の意見を出させる時に活用します。
初めはうまくは発表できない子どももいますので、できるだけ発表内容を簡単なものにします。


「好きなくだもの一つ」「好きな遊び一つ」というようにします。
もし、うまく答えらないときは、隣の人に小さな声で聞きます。
これによって、友達の発言をしっかりと聞けるようになります。
全員参加の指導です。
傍観者をつくらないことです。
「先生は、みんなを相手にしているぞ」
「これは大変だ、今までのようにふりをすることができないぞ」
そのように思わせることです。


全体で授業しているとき、「○○さん、Bさんが言ったことはどういうことですか。」
と、よく聞けている子どもに指名します。
聞いていない子どもを指名してはいけません。
指導するときは、優秀な子ども、得意な子どもに模範例を示すようにします。


指導は継続します。3週間は継続します。
3週間、3カ月の継続です。
3カ月は、すべての行いが習慣化するための最低の時間だそうです。

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