教育随想 55回 音読が苦手な子の指導
音読が苦手な子は、文字に対する視野が狭くなっています。
文章を見て、一回に目に入る文字数が非常に少ないですね。
音読の指導にはいろいろな方法があるので、これがベストというものはないのかもしれません。私は、教育技術の源は、目の前の子どもたちの中にあると思っています。したがって、先生方が、今の学級の子どもたちを観察して、いろいろと試してみられたらいいです。
教育は、試行です。
「ためしてがってん」です。
合点しなければ、何度でもためせばいいですね
教育参考書から実践方法をもってこられても、所詮は店頭販売の既製服を買って着用するようなものです。ぴったり感がありません。
音読指導、個人指導として、小集団指導としての2つの方法を紹介します。これも先生がたにとっては既成品ですが・・・。
個人指導として
本を手にもって音読します。この時に、1ページを音読するのに何回、本を見て読むのか、できるだけ少なくなるように読ませます。
これは、本を見て、一回にいれる文字数を増やすための手立てです。
その回数を教科書の隅に記録していきます。
読める子どもは、一行近くを視野に入れています。
小集団指導として
個のエネルギーを増幅させる小集団学習をすすめる。
①各班から音読が苦手な子ども1人が立候補する。
②立たせて一人ずつ読ませる。
③次に、その他の班の子どもは、その苦手の子を取り囲むように立つ。
④一緒に音読する。周りの子は、苦手の子に体を向けて、相手の耳に音
を流すようにして音読する。
⑤何回か実行したら、最後にもう一度ひとりずつ読ませる。
その時のことを子どもたちは、日記に次のように書いています。
「みんなが思い切って、班のなかで本読みをしていると、四人がまとまってき
て、声がそろっておなじように読めた。O君もだんだんその気になったのか、
わたしの声も合わせて四人の声が聞こえはじめた。班で力を合わせるだけでも
友達を変えることができるんだ。O君の読み方が変わると、班がすっきりする
し、班全体が変わったようで、とてもすみきったような気がする。始めに読ん
だときとちがって、感じが出てきた。班でやっても変わらないなんていやだ。
班の力ってすごいな。」
「グル-プで音読練習したとき、グル-プっていいなあと思った。今まで、グ
ル-プがいいなあと思ったのは、はじめてではないけれど、今日はとくにそう
思った。おかげでわたしのほんの読み方がよくなった。いままでのグル-
プなんてあまり関係がなかった。グル-プのおかげでよくなったことは今まで
なかったからだ。この学級やグル-プにいると、たのしくならないではいられ
ない。もっと、この学級で、自分のやりたいことをやって実現させたい。」
個人にとって、小集団の仲間が自分の役に立っているという実感。逆に、自分の力が班の仲間を育てることに寄与しているという喜び。
個人と集団の相互作用がはたらきだすと、予想以上に子どもたちは成長します。