教育随想(授業づくり・集団づくり・児童理解)

実践、反省、さらに実践・・・

子供たちを相手にして、悩んだり迷ったりしている先生に読んでいただきたいと思っています。
迷うことが、悩むことが先生の良心であり、最も大切な能力ではないのでしょうか。
 わかったことよりわからないこと、できたことよりできなかったことに 心を向けていく先生は 素敵だと思います。

教育随想 335回  「見通しをもつ」ことが 自学自習への道

子どもたちの学びを主体的なものにするために、前回では、「学習のめあて」に焦点をあてました。雲の上のめあてを自分のところにおろして引き寄せることが大切だとお話しました。
今回は、めあてよりもっと大切なものが「見通しをもつ力」です。
ところが、実際の授業の場面では、先生が子どもに一方的にめあてを提示することが多いようです。


めあてが決定されると、先生の指導のもとに学習が始まります。
校外学習で先頭に立って引率する先生のごとく、子どもたちは、先生の指示にしたがってついていくだけです。どのようにしてたどり着くかはわかりません。


4年生の算数「折れ線グラフを書く」学習の場面を例にとってみます。
めあては「折れ線グラフの書き方を調べよう」です。
表に示された月別、一年間の気温を折れ線グラフに書き込みます。
教科書には、折れ線グラフの書き方が囲み記事になって説明されています。
その下には、記入するためのグラフ用紙が載せられています。


「折れ線グラフの書き方を調べよう」というめあてになっていますが、書いて変化の様子を考察する過程になっています。
与えられた表(資料)を読む➡グラフの書き方の説明を読む➡実際にグラフ用紙に書く➡作成したグラフを見て変りかたを調べる
以上、4つの学習過程を子どもと一緒になって考えます。
そして、みんなが一人の力でわかる、できるところ、あるいは、友達の力を必要とするかもしれないところ、先生の助けを必要とするところを子どもなりに想像します。


表の気温変化を読み取る場面は、すでに前時に読む学習をしていますので、子どもたちは自力で読み取れます。
次に、グラフの書き方を読み取る場面では、新しい内容が入ります。
できる子どもは、自力でこなしますが、多くの子どもたちは、そこに書かれている言葉に迷います。
「横軸・・同じ間をあけて」とか「一番高い気温が表せるようにめもりのつけ方を考える」の言葉に迷いが生じることが予想されます。
そこで、前もって「グラフの書き方」を読んで、意味のわからないところをわかるようにします。先生が説明もありですが、できるだけペアを使うことで子どもたちの知恵を寄せ合うようにします。
そのうえで、ペアで話し合ってもわからない、すっきりしない、あいまいなところを発表させて全体で確認します。


そうすることで、グラフは独りで作成できるようになります。
もちろん、子どもによっては、記入することにためらい(めもりのうち方、点をグラフ上にとる時など、迷いがでてくるはずです。
その場面で先生の机間巡視指導が重要になります。
いかにして「ヒント」を与えて、あたかも自力で考えた、気づいたようにもっていくが大切になります。直接答えを教えるのではなく、答えの一歩手前まで導きくようにします。
グラフ作成を終えたあとは、自分のグラフを友達と相互点検します。
これらのことも学びが始まる前に子どもたちに見通しを持たせるようにします。


そして、「あなたはどのようなグラフが書けたらいいとするか」と、完成するグラフに対するめあてをイメージさせます。
これは、新しい計算を学習する時にも言えることですが、「あなたは、このかけ算をどこまでできるようになったらよしとするのか」をめあてとともに見通しを持たせます。「まちがえないようにできる」「速く計算できる」「見直しができる」などの見通しを持たせるようにします。


学びに対する見通しは、子どもの能力に合わせて持てるようにします。
決して完璧なものを求めることなく、見通しを持たせる、自分の未来行動を予測できるような意識と能力を育てます。


このようにしていくと、掃除、給食や係の仕事の段取りについて見通しをもつようになります。学びは学びの世界を離れて日常の生活においてもその姿勢が波及していきます。


これらのことは、すべての授業にするのではなく、見通しやすい学習場面を使って指導します。指導しながら子どもたちに使わせていきます。


指導したら子どもを後ろから、横から見守りながら、指導の評価をするのが先生の仕事です。指導したら自力で歩かせて見守ります。

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