教育随想(授業づくり・集団づくり・児童理解)

実践、反省、さらに実践・・・

子供たちを相手にして、悩んだり迷ったりしている先生に読んでいただきたいと思っています。
迷うことが、悩むことが先生の良心であり、最も大切な能力ではないのでしょうか。
 わかったことよりわからないこと、できたことよりできなかったことに 心を向けていく先生は 素敵だと思います。

育随想 319回 授業 広場づくり そこに ビルを建てる

コロナ対応の授業で授業時間数に限りがでてくる可能性があります。
そうなると、教材の核をもとにして切り捨てるものもでてきます。


たとえば、4年国語「白いぼうし」は物語文の最初です。
一年間で「白いぼうし」「一つの花」「ランドセルは海をこえて」「ごんぎつね」
「プラタナスの木」「初雪の降る日」、この中には読書教材も含まれますが、物語文としては6つの作品を学ぶことになります。
指導要領の目標は一年間の終わりに達成すればいいのです。したがって「白いぼうし」で、すべての読解技能を入れる必要はありません。
まして、子どもたちの心が沈んでいる中での最初の作品であることを意識して授業に臨む必要があります。


本来ならば、場面ごとに区切って読み取る学習をします。
ここでは、課題を絞って読み取らせます。
一つ目は、主人公の「松井さんの人柄」を読み取ります。
二つ目は、ファンタジー(不思議だな)の世界はどこから始まるのかを入口として、その不思議な世界を楽しめるようにします。


授業を問題解決学習として計画します。
その場合、授業の流れの基本として、
「広場づくり」そのあと、そこに「ビルを建てる」ようにします。
これは難しいことではなく、私達が自分のアイデアを考えたり、会議などで話題を深めたりするときと同じです。
ランダムに問題に関係のあるアイデアを出して(広場づくり)から、その中の一つのアイデアに絞って(ビルを建てる)深めます。


一つ目の松井さんの人柄を読み取る学習を通してお話します。
①全文から、人柄が表れていると思う言葉を一人で拾い上げます。
 独り学習です。
②拾い上げた言葉、文を集団の場に発表します。
発表した言葉や文は、全員がわかるように板書します。
子どもたちが黒板を見て考えられるようにします。
黒板がそのまま学習の広場になります。
 本来なら班学習から全員学習へと移りますが、班の機能が確立されていない
 初期の授業では、すぐに全員学習を実施することが多いです。
たとえば、子どもたちが発表する言葉、文の例を挙げます。
においまでとどけたかったのでしょう。
・あまりうれしかったので・・・この車にのせてきた。
・小さなぼうしをつかんでため息をついている
・この子はどんなにがっかりするだろう。
・かたをすぼめてつっ立っていた松井さん。
・夏ミカンに白いぼうしをかぶせると、飛ばないように石でつばをおさえました。
・ひとりでにわらいがこみ上げてきました。
他に子どもたちによっては、いろいろな言葉や文にひっかかってきます。
学びは「ひっかかり」です。言葉を見過ごさないことです。


ひっかかりは、先生のものさしと子どものものさしは違っています。
子どもが感じたことがどんなに些細なことでも板書します。
子どもにとっては、広場に自分の考えが書かれていることがうれしいのですね。
決して、先生の一方的なものさしで、子どもたちの考えを切らないようにします。
もし、それをするならば、あとで、子どもたちが話し合いをするときに問題にしてみるのがいいです。まず、子どもたちに任せることが必要です。


③発表された言葉や文から子どもたちに話し合いを通して考えさせます。
 物語文の学習には、正解がありません。(作品価値を味わう)
 算数のようなむ正解がありません。
アナログの世界です。
だから、話し合いの中で、
お互いの共通する考えを求め、さらに、違う考えであっても話し合うことでお互いの考えが歩み寄ることがあります。あるいは、まったく違う考えに発展していくこともあります。


大切なのは、松井さんという人間を子どもたちの人生の経験をもとにして、子どもなりに吟味する活動です。
人間の生き方を考えることそのものに意味を持たせます。
ただし、表現されている言葉から離れてはしまわないように、あくまで、文章事実を根拠として松井さんという人間を深めていきます。


そこで必要な技能は、確かに言葉や文を読み取る力です。
国語は技能学習でもあります。
説明文では説明の仕方、その論理の展開の仕方を学びます。


以前にお話ししましたが、先生が作品論を前面にだして子供たちに迫るのではなく、子どもたちと作品を直接対面させて、子どもの個性的な読みを引き出すことが大切だと考えています。
作品論は、先生が子どもたちの考えを位置付け、読みの方向性をもたせるために必要です。教材解釈の二面性の一つですね。


広場づくりとビルを建てる学習を頭にいれておくと、子どもたちの考えや感じ方を広場に乗せることを意識するようになります。
「まず、みんなの考えを聞かせてください」という出発。
最初から先生がオーナーとして勝手にビルを建てて、そこに子どもたちを追い込まないようにします。

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