教育随想(授業づくり・集団づくり・児童理解)

実践、反省、さらに実践・・・

子供たちを相手にして、悩んだり迷ったりしている先生に読んでいただきたいと思っています。
迷うことが、悩むことが先生の良心であり、最も大切な能力ではないのでしょうか。
 わかったことよりわからないこと、できたことよりできなかったことに 心を向けていく先生は 素敵だと思います。

教育随想 318回 教材解釈の二面性 作品の論理よりも子どもの論理

教材解釈には二面性があり、対象に関わらず、その教材がもっている不変な面と、その学年、発達段階に応じて改革できる面が備わっています。


よくあるのは、先生が教材解釈と称して自分の考えを固定し、一時間、子どもの考えを無視(受け流し)して、突っ走る授業です。


料理のレシピを見て調理します。
レシピには、対象に関わらず料理を作る方法が書かれています。
しかし、実際には、子ども、若者、お年寄りと食べてもらう対象が違うと、レシピも対象に応じて変えていく必要がありますね。


教材解釈も同じです。
この教材はこれを教えなければという強い信念をもつほど子どもたちの自由な発想をだめにしてしまいます。
4年生の国語の教材の最初に、物語文「白いぼうし」があります。
この教材を例にして、教材の二面性をお話します。


単元目標


◎登場人物の行動や気持ちなどについて、叙述をもとにとらえることができる。
〇文章全体の構成や内容の大体を意識しながら音読することができる。
〇文章を読んで理解したことに基づいて、感想や考えをもつことができる。
改訂前の教科書の目標は違っています。
◎場面の移り変わりに注意しながら、中心人物の人柄や気持ちの変化、情景などについて、叙述をもとに想像して読むことができる。
 主人公のタクシーの運転手、松井さんの人柄を読み取る学習になっています。
 私は、物語文は人間の在り方を学ぶものだと考えています。
 そういう点では、改訂前の目標を選択します。


以下、私の指導案メモです。
教材についての価値
○ファンタジーのおもしろさを十分に味わえる。
  不思議だなあ という感覚が芽生える作品である。
○文芸教材の中心になるのは人物である。松井さんに寄り添って読む。
   ※松井さんの目と心に寄り添って読む。
     ➡松井さんが見ているもの、心を動かしていることは何か
     ➡同時に松井さんをわきから見ている。第三者の視点
○松井さんの人柄「やさしさ」「思いやり」が流れている作品である。
○松井さんのやさしさと、そのやさしさに根付く「豊かな想像力」と「行動力」が繰り返し描かれている。
   ※人間をどういうふうにとらえさせるか、認識させるかということが大切
◎ファンタジーのおもしろさ、「不思議だなあ」と感じるのは、どこからきているのかを  さぐるおもしろさ。


○題名「白いぼうし」を中心に「松井さん」「男の子」「ちょう(女の子)」が結びついている。「白いぼうし」を中心として、すべてが繋がりあっている。
○「白いぼうし」は、松井さんのやさしさの象徴であり、それが、ちょうを救い、ちょうを女の子の姿にして、やさしい松井さんが、ちょうをその故郷までとどけてやるということになる。男の子には、夏みかんがプレゼントされる。
◎作品は、松井さんのやさしさを色やにおいを背景にして鮮やかに描かれている。


                             以上


ここまでが、作品、教材の価値です。
これをすべて子どもたちにぶつけてしまってはたいへんです。
子どもたちは戸惑い、消化不良を起こします。
そこで、指導の焦点化、重点化が必要になります。
子どもたちの実態に応じて、この教材の価値から何を子どもたちの前にだすかを考えなければなりません。


自分本位の考え方をする子どもが多ければ、温かみに書けると感じたなら、
人の心の痛みや悲しさ、つらさが自分のことのように分かるという能力を育てることをねらいとします。それを松井さんの行動から学び取らせます。
人間を学ぶ学習です。
  松井さんの人柄や気持ちを読み取りながら話の展開を楽しむ学習にします。
      ➡相手の痛みがわかるというのは、「想像力」です。
想像力とは、相手の視点で物事を考えることです。
この作品はファンタジーです。
 春の季節感、色、におい、情景などが描かれ、どこかふしぎな世界に引き込ん
 でいく作品です。子どもたちは不思議だなあと感じます。
 今、コロナの問題で子どもたちの気持ちは沈みがちです。
 そのような実態のなかで、さわやかなファンタジーの世界を経験する楽しさ
 を強調したいと考えるのもいいですね。。


さらに、次のようなことを重点化してもおもしろいです。
新学年で、全員をしっかりと参加させる音読学習です。
登場人物の行動や心情、場面の様子などがわかるように音読することができる
ようにします。
音読とは、文字を通して自分の景色を描くことができることです。
絵をかくように音読します。(声という絵の具で景色を描く)
この作品は、季節感、色、におい、情景などが描かれているので、言葉を音に表すことを通して、言葉に色合いをつけて声に出し、情景のイメージを広げる学習
にするのもいいと思います。


あるいは、少しみんなで考え合う学習を取り入れるのもいいです。
不思議だなあと思ったところを見つけ、その根拠を読み取る学習です。
フアンタジーの入り口と出口を話し合わせるとたのしいです。
この場合、子どもたちが問いをつくり、それを追求する形になります。
問題解決学習にします。
私の地域は、5月6日まで休校(延長もあるかも)です。
長い休校が続いたなかでの授業になります。
この教材を4時間程度(7時間扱い)で凝縮する必要があります。
最初の物語文なので、音読を中心にして、ファンタジーを楽しめるような学習展開にするのがいいだろうと考えます。
みんなで声や気持ちを合わせる音読を入口として一年の出発にするのもいいでしょう。


私は音読リレーを取り入れていました。
実際例
音読リレーの仕方を知る。
今から一人ずつたって音読してもらいます。まちがったりつまずいたりしたら、先生がストップをかけます。
みんなも気づいた人がいたら「ストップ」と声をかけなさい。
次の人が立って、まちがえたところから読み始めなさい。
さあ、全員で何ページまで読めるでしょうか。途中であっても音読リレーは終了します。
全員で白いぼうしが最後まで読めるかどうかが問題になります。
男女対抗で音読させると盛り上がります。 
間違えた人に続いて読むとき、読むところを間違えてもまちがったことにします。
ストップをかけるのも最初のうちは先生ですが、途中から子どもたちに任せます友達の音読をしっかりと聞くようになります。
授業の最初にこの「音読リレー」取り入れると、子どもたちは自宅で練習するようになります。練習しなさいといわなくても。
リレーのチームをいろいろと変えていきます。
班対抗、列対抗でもいいです。


長くなりましたが、要するに、子どもたちの実態、今、置かれている状況に合わせて、教材のどこを重点化するか、どこを切り捨てるかを考えます。
単に、作品論だけで教材を子どもたちに提示しません。
授業は、大衆料理です。決して、高級料理ではありません。
大切なのは、子どもたちの学習に対する意欲化と仲間意識の芽生えです。

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