教育随想(授業づくり・集団づくり・児童理解)

実践、反省、さらに実践・・・

子供たちを相手にして、悩んだり迷ったりしている先生に読んでいただきたいと思っています。
迷うことが、悩むことが先生の良心であり、最も大切な能力ではないのでしょうか。
 わかったことよりわからないこと、できたことよりできなかったことに 心を向けていく先生は 素敵だと思います。

教育随想 286回 授業 子ども優先とわかってはいるが

まず、最初に授業者として意識しなければならないことは、教材優先の授業から子ども優先の授業に切り替えていくことです。
教材を教えることは大切なことですが、ただ、「教える」ことが「子どもが学んでいる」ことになっていないことがありますね。


医者の例をあげます。
一つの病気を治療するマニュアルはあります。
そのマニュアルが優先されて、患者の治療が行われたらどうでしょうか。
治癒することもあれば、そうでないこともあるでしょうから、これがいけないとも言い切れません。医者の話によると、若い先生は、医術に基づいて治療しがちだそうですが、ベテランは、患者の状態を細かく観察しながら、そこに、医術を適用するそうです。
今、医者というより医療技術者が多くなっているように思えます。


患者が先か、医術が先かです。
ですから、そういった医者は、まず、患者の状態を診ます。
問診はいうまでもなく、必要に応じて触診します。
今は、医療機器だけが進化して、医者の患者を観察する姿が少なくなったように感じます。
先生は、私の訴えをコンピュータに書き込んでいますが、私の表情をみることは少ないですね。


医者について私は、今でも忘れられない医者がいます。
近所の町医者で、医療設備はほとんど整っていません。
レントゲンも超音波機器もありません。
ですから、患者も少ない病院です。


私は、どんな病院か、かねがね気になっていましたので、脇腹が痛くなった時に診察してもらいました。先生は、触診をされました。右わき腹を手で深く押さえられました。
いろいろな角度から押さえられたあと、「胆石がありますね」と先生が言われました。
私は驚いて先生に尋ねました。
「どうして、触っただけでわかるのですか」
すると、先生は、「私は、大学で勉強していたとき、教授から、この触診をしっかりと教わりましたのでわかるのです」
さらに、先生は、「一度、他の病院で、超音波で検査をしてもらってください。」と続けられました。


私は、さっそく設備のある病院にでかけて検査をしてもらいました。
結果は、胆石ありでした。
私は、医者の原点を見たように感じました。
教育も同じだと思ったものです。
その先生は、年老いておられましたので、その二年後に亡くなられました。


まず、子どもありき、子どもを見て、観察して授業を組みたてていこうと思いました。
味見しながら調味料をたしていく調理も同様ですね。


治療することは大切ですが、それは、患者の様子を観察しながら実施することです。
教えることは大切ですが、子どもの理解と意欲を注意深く確かめながら実施するのが授業だと考えます。こんなことは、当たり前のことですが、やはり、教材をどう流すか、理解過程だけが研究会で取り上げられることが多いです。

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