教育随想(授業づくり・集団づくり・児童理解)

実践、反省、さらに実践・・・

子供たちを相手にして、悩んだり迷ったりしている先生に読んでいただきたいと思っています。
迷うことが、悩むことが先生の良心であり、最も大切な能力ではないのでしょうか。
 わかったことよりわからないこと、できたことよりできなかったことに 心を向けていく先生は 素敵だと思います。

教育随想 274回 「はい」で始まった入学式 「はい」で終わる卒業式

「はい」という返事が体育館いっぱいに響きわたります。
卒業証書授与の瞬間です。
子どもたち一人一人が主人公になる瞬間です。
子どもたちは、呼名されたとき、何を思い抱いて「はい」と返事するのでしょうか。
たった2文字の言葉の中に、どのような気持ちを入れ込むのでしょうか。



「はい」子どもたちが一年生として入学したときに、教えられる挨拶です。
名前を呼ばれたら「はい」と返事するんだよと言われて、照れながらも返事する子どもたちの表情はかわいいですね。
その子どもたちが、最後は「はい」で終わるのです。
「はい」で始まり「はい」終わります。



私は、この呼名の瞬間が好きでした。
私は、名前を呼ぶとき、一人一人の子どもたちと正面で向かい合うようにしました。
目と目で語り合う瞬間でした。
子どもと私との一対一の授業です。
子どもたちには、「私が名前を呼んだら、すぐに返事をかえさないでください。返事をする前に少し間をあけて、自分の気持ち、決心、思い出などを心の中に映してみてください。」


名前を呼ぶ。
少し間をあけて返事が返ってくるようにしました。
私と子どもとの間には沈黙がありました。
言葉では言えないものが伝わりあったように感じました。



歩いて止まる時の間
その間を起点として次の動きが始まります。
呼びかけの言葉の間
そして、証書授与の時の間
この瞬間は、子ども一人が主人公です。
式場のすべての眼差しが一人の子どもに集まります。
堂々とした姿を見せられるように一年間を育ててきました。
ただ、心残りはありました。



「間」を大切にする子どもになってほしいと思いました。
「間」とは沈黙です。沈黙を大切にする子になってほしいと思いました。
私は、子どもたちの顔を見て名前をよぶとき、思わず泣きそうになることがありますが、これはこらえなくてはいけないと思いました。
子どもの卒業式であって、私の卒業式ではないからです。
私の卒業式は、次の日の終業式ですから。

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