教育随想(授業づくり・集団づくり・児童理解)

実践、反省、さらに実践・・・

子供たちを相手にして、悩んだり迷ったりしている先生に読んでいただきたいと思っています。
迷うことが、悩むことが先生の良心であり、最も大切な能力ではないのでしょうか。
 わかったことよりわからないこと、できたことよりできなかったことに 心を向けていく先生は 素敵だと思います。

教育随想 273回  卒業式 呼びかけは、その子どもの一枚の写真

呼びかけの脚本を作成する過程は、各学校いろいろとあります。
例年の脚本に少し、今年の子どもたちの言葉を入れ替えます。
あるいは、子どもたちに呼びかけ脚本作成実行委員会を組織して学年全体で作っていくこともあります。
学級ごとに言葉をつくり、実行委員会に持ち寄って脚本を作ります。
ただし、実行委員会でまとめて終わりにしないことです。
さらにできあがったものもを学級に持ち帰って、クラスで検討することが必要です。学級と委員実行委員会を何度も往復させることで、学年としての子どもたちの参加意欲を高めることができます。


ただ、時間のかかることです。
三学期の最初から活動する必要があります。


今回は、できあがった脚本をもとにした練習の仕方です。
第1段階
個人のせりふが決定されたら、最初は台本を見て一回通します。
「次回からは台本をみないで練習します」と伝えて、翌日から台本なしの練習に入ります。


第2段階
劇指導の場合と同じです。
体育館で先生を中心に円陣隊形をとります。最初は小さな円です。
「先生の耳に届くように声を出しなさい」と指示して、自分のせりふを言わせます。
そして、少しずつ、円陣の半径を大きくしていき、最終的には体育館の壁に張り付かせます。
距離を遠くにしても声がしっかりと届くようにします。
全体の子どもたちを相手にする時は、全体の意欲向上をはかるためには、しっかりと声を出している子どもをピックアップして全体の前で発声させます。
常に、模範的なものを提示することです。
子どもの意欲をけん引させるものは、先生ではなく、優れた子どもです。


第3段階
声がしっかりとでるようになったら、次に「どの言葉に自分の気持ちを強く伝えたいかがわかるように声の出し方を研究しなさい」と伝えます。


子どもたちが自分の言葉にイメージ、景色を持っていることです。
自分の中で思い出の写真の一コマが描かれているようにします。


子どもたちと対話して、呼びかけの言葉にこめたイメージを聞き出します。
それぞれの子どもたちの呼びかけには、その子の思い出の一枚の写真が写っています。その景色を前面に表現させます。


強調は、大きな声だけでなく、ていねいにゆっくりと話したり、逆に、心をこめて強く小さく話したりすることもあります。
呼びかけの技術的な面で言いますと、言葉の間合いが大切ですが、それ以上にバウンドすることが必要なのです。
前の言葉を踏切り台にして、次の言葉をはねるように表現します。
跳び箱を飛ぶときのイメージを持たせます。
たとえば、「はばたいて いきます」という言葉の場合
「はばたいて」を踏み台にして(息をためて)、「いきます」の言葉を上に強く飛び上がらせます。このような場面が、よびかけにはいくつもあります。
そのイメージを子どもの前で手の動きや高さでサポートします。


呼びかけの通し練習はできるだけあとで実施します。
それまでは、場面ごとに子どもたちに任せていきます。
そして、お互いに聞き合ってアドバイをしあえるようにします。


呼びかけの言葉が流れるようになったら、本格的な指導が始まります・
一連の流れは一つのドラマです。
何を伝えたいか、何がわかってほしいのかを明確にします。
クライマックスをつくります。大きなもの、小さなものです。
そのために、流れを速くするところ、ゆっくりと間合いをあけて言葉を刻んでいくところなどを子どもたちと話し合いながら作り上げていきます。


表現とは、自分の殻を破ることです。
表現とは、今の自分の思いをこえていくことです。
これくらいでよいという妥協をしないようにしたいものです。
卒業式は最後の授業ですから。


追加
卒業式で初めて子どもたちに一本とられたという式が今でも心に残っています。
それは、卒業式本番のときに、台本や練習の時になかった言葉を子どもたちが卒業式本番で、追加、挿入したことです。とても驚きました。子どもたちが間違えたのかと思ったのですが、そうではなく、前日に子どもたちが内緒で打ち合わせをしたということでした。
この時は、子どもたちがとても大きく見えたものです。

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