教育随想(授業づくり・集団づくり・児童理解)

実践、反省、さらに実践・・・

子供たちを相手にして、悩んだり迷ったりしている先生に読んでいただきたいと思っています。
迷うことが、悩むことが先生の良心であり、最も大切な能力ではないのでしょうか。
 わかったことよりわからないこと、できたことよりできなかったことに 心を向けていく先生は 素敵だと思います。

教育随想 232回  現場の先生は 救急医

救急医療の現場のドキュメントテレビが時々あります。
救急医療に携わる先生の逞しさにいつも感銘を受けています。
自分の専門はあっても、すべての病気、ケガに対応しなければいけません。
最初に患者に出会う医者としての責任は重いですね。


救急医療に携わる先生の言葉が印象的でした。
「他の病院が閉まっている夜間、休日などは私が受け入れるしかないです。そして、いろいろな患者さんに対応することで、自分の技能が磨かれていくのがわかります。でも、若い時は不安だらけでした。」
専門医も大切ですが、現場において直接患者と向き合う救急医は重要です。


先生の世界もよく似ています。
現場の先生は、救急医です。
どのような子どもたちにも対応、観察、所見、指導していかなければなりません。特定の教科が苦手だとか、体育が苦手などと言っておられません。
目の前の子どもたちをどうするのか、しかも、一瞬において対応していくことが多いですね。


教室は先生として一人前になる技能を錬磨する場所です。
子どもは、自分の夢、希望、理想を描き、自信をもって明日を待つ心を育てる場所です。
いつもお話しているように、先生の技能向上は教室の外にはありません。参考書の中にはありません。
目の前の子どもたちが先生を育ててくれています。
指導している者(先生)が、(子供に)指導されているのです。


医者は患者が発熱していると解熱剤。
咳をしていると咳止め。
喉が痛いと訴えると鎮痛剤。
対処療法でしかありません。
子どもが宿題をしてこないと、「どうしてさぼるの」「ダメでしょ。勉強は大切です。」
時には「放課後居残りをさせます。
発言の声が小さな子供がいると、「もっと大きな声で言いなさい」と要求します。
すべて対処療法です。
なぜ子供がしないのか、できないのかを探ることが教育に携わる者の良心ですね。


私は、医者については、今でも心に残ることがあります。
風邪で、病院に行きました。
医者は、睡眠時間や仕事の忙しさを私に聞きました。
食事はどのようにとっているか、夜更かしはないかなど、細かいことを聞かれました。そして、最後に言われたのは、「微熱があるから早く寝なさい。」と言われて薬をだしてくれました。
私は、ちょっと細かいかなと思いながら病院を後にしました。
その病院は、一人の患者に接する時間がとても長いことで有名でした。
私の時も15分以上の時間をとっていただいたように思います。
風邪の原因を日常生活の中から探しておられました。


私が驚いたのは、その後のことでした。
その日、自宅にもどって9時すぎにその医者から電話がかかてきました。
「まだ、起きているんですか。早く寝なさいよ。明日、もう一度、診察に来てください」と言って電話をきられました。


ここまで患者に寄り添う医者は初めてでした。
おそらく、そのような医者は今ではおられないでしょう。
患者の病気の原因を日常生活のなかから見つけようとされる姿勢は、学校の先生にも必要なことですね。
その後も、その先生に私のホームドクターになってもらいました。

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