教育随想(授業づくり・集団づくり・児童理解)

実践、反省、さらに実践・・・

子供たちを相手にして、悩んだり迷ったりしている先生に読んでいただきたいと思っています。
迷うことが、悩むことが先生の良心であり、最も大切な能力ではないのでしょうか。
 わかったことよりわからないこと、できたことよりできなかったことに 心を向けていく先生は 素敵だと思います。

教育随想 208回 話す・聞く 指導 話し手に気づかせる 聞き手の指導

「言葉をはっきりと」当たり前のことで申し訳ありません。
そんなことわかりきっていることだよと言われそうです。
しかし、子どもたちに気づかせるように指導することは難しいものです。
「はっきり言いなさい」という指示のみで終わっていることがあります。


わたしも含めて、自分がはっきりと言葉を発しているかは自分自身では気づきにくいものです。
相手に聞き返されて初めて、自分の言葉がはっきりしていないことに気づくことがあります。何度か聞き返される経験を積むと、自分の話し方の不明瞭さを疑う必要があります。


はっきりしない原因として口の開け方の問題もありますが、多くは、話すのが速いことがあげられます。 
テレビをつけると、早口でトーンの高い話し方が主流を占めています。
子どもたちもその影響下にあります。
テンションをことさらあげて、自分をアピールするかのような話し方は聞き手にとって疲れます。
自己主張したいという気持ちが伝わっても、聞き手に聞いてほしいという心遣いは感じることができません。


話し合いは考え合い深め合うことです。
だから、「ゆっくりと間をあけて話す」ということを定着させる必要があります。
そのためには、子ども同士で、話し方が速すぎたり、はっきりしない時には、「聞き返す」ようにさせます。
「もう一度いってください」「ごめんなさい、もう一度いってもらえませんか」
この言葉を多用させることで、話し手は自分の話し方を振り返るようになります。


聞き手が話し手のあり方を聞き返すことで変えていきます。
 ただし、次のような発言はいけません。
「はっきりしないので、もっとはっきり言ってください」
「速すぎて、よくわかりません」
というように、相手の欠点を指摘しあうような発言は、お互いに不快を伴い、雰囲気を暗くさせます。


そのような攻撃的な話し方を極力さけるようにします。
「ごめんなさい、もう少し、ゆっくりと話してください」
「少し聞き取れなかったのだけど、こういうことかな・・・」
このような発言が多くなると、話している子どもたちは、自分の話がうまく伝わっていないことに気づいてきます。


指導例
 言葉そのものをはっきりと刻む練習を朝の会の中に入れます。
 アナウンサーの発音訓練の資料から抜粋して練習します。
その時に、お互いに向かいあって相手の口元を見ながら練習するようにします。
口の開け方を確かめながら練習します。2分間程度です。


心理的要因があるときは、話し手は、ぼそぼそ話します。
まちがったらどうしょうという恐れが言葉に表れます。
実は、この要因がとても大きいのです。
「話し方をはっきりと」と指示しても、その時は少しだけはっきりと話してもすぐに後戻りします。


まちがいやつまずきを受け入れる教室の雰囲気を同時に育てていかなくてはなりません。その先頭に立っているのは、先生です。
先生が優しく何度も聞き返していきます。微笑みをもって聞き返します。
聞き手の指導の大部分は、先生の聞き方次第です。
その聞き方を子どもたちは見ています。


問題になる先生の聞き方
・自分が期待していない発言に対して冷たく対応している。
・顔を一回も見ることなく耳だけで聞いている。
・「そうか、他に意見はないですか」と、その子の意見を無視する。
・「さっき話したでしょ。何を聞いているの?」
     聞いていてもわからなかったから聞き返しているのに。
・「よくわからないねえ。もっとはっきり言いなさいよ」


こういう先生の姿を子どもたちは注意深く観察しています。
「なるほど、このぐらいの言いかたをしてもいいのだな」と思うようになります。


「言葉をはっきりと」話せる環境づくり、聞き手として、集団として、そして、先生としてのあり方を洗い直すことから始めます。

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