教育随想160回 日記指導 字数制限から時間制限へ 書き出しから文末提示へ
日記に自分の思いをしっかりと表現できるようにするためには、いくつかの方法があります。
私の実践した方法を紹介します。
一行日記
子どもたちのなかには、書くことが苦手な子がいます。そのために、最初は「一行日記」から始めます。それ以上書いてはいけません。自分の一番書きたい思いを一行で表現させます。
書くことの中心を書かせるようにします。
子どもたちが「先生、もう少し書きたいよ」と言うまで続けます。
やがて、三行日記へ
三行の文字枠があると自分が一番言いたいことをまとめることができます。要約するようになります。「一番書きたいところから始める」前置きは省略させます。作文指導につながります。
行数制限から時間制限
慣れてくると字数は無制限にしますが、今度は時間を制限します。
「5分間(3分間)日記」です。
ところで、できるだけ子どもたちの日記を紹介しないようにします。
これはとても大切なことです。
実名をあげて読まれる先生がいますが、日記がプライバシーにかかわることなどは紹介してはいけません。
そうでない場合であっても、ほかの子どもにも読んで聞かせたいと思うときは、書き手の子どもに事前に打診します。
許可をもらえたら紹介するようにします。
また、紹介されることで、その子の励みになるようなものであれば全員に公開します。
私の日記がみんなの前で読まれるかもしれないという不安を持たせてはいけません。素晴らしい提言であっても、それを紹介しません。
良いことを書いて発表すると、今度は、発表したもらうために良いことを書こうとさせてしまいます。
最初の書き出しを提示します。
行事のあとの日記には
「もう少しだったなあ」「よかった、よかった」「ああ、しまったなあ」など書き出しを与えます。書き出しについては一つだけに限る必要はありません。いくつかあげて、選択できるようにします。
少なくとも子どもたちの気持を拾い上げるきっかけをつくるものです。
先生に言いたいことがある時は、高学年でも「先生、あのね」という書き出しを与えます。子どもたちは、にんまりして書き始めます。
子どもたちが先生へのお願いから、改善してほしいことを書き始めると子どもとのつながりが強くなっています。
日々の生活から離れて書く時は
「もし・・・」
「・・・がなかったら・・・」
「小さい頃はね」
「よくやったなあ」など。
書き出しは、子どもたちの実態から生まれますので、いろいろな題材が考えられます。
文末表現を提示することもあります。
「今日は、心に残る一日であった。」
「今日は、しまったと思った一日であった」
「ひとこと 多かったなあと思った一日であった」
最後の文末表現ですが、そのように思わなかった子どもは、否定表現にさせます。
「今日は、心に残る一日ではなかった。」
文末表現を提示すると、その根拠を書くこととになります。
「なぜ、心に残った、残らなかった」のかという理由づけをします。
日記指導は、学級の問題があったとき、時間をさいて子どもたちの考えを書き記す時もあります。
書くことで、自分の考えの輪郭が明らかになります。
書くことは思考することです。
書くことは見つめることです。
書くことは吐き出して心のバランスをとることです。
自分が今まで言えなかったことで、心にたまっていることがあれば、その題名を「心の便所」にしました。万引きの件は、この題名を通して書かれていました。
次に「テーマ日記」です。
これは一つのテーマについて、毎日、少しずつ書き足していきます。
「私の性格」「私の宝物」「私ってどんな人」などのように掘り下げて考えることを話題にします。何回続けるかは、個人任せです。中には、自分のことを数回かけて書く子もてできます。
多角的な視点を与えて書かせることができます。
日記指導は子ども理解につながりますが、あとの助言で先生の価値観をあまりださないほうがいいですね。共感的な助言がいいと思います。
特に、「こうすればいい」「それはだめだよ」という助言をすると、その子は、もう自分のマイナスを書かなくなります。ほめずきるのもよくないです。ほめてもらうことが目的化してしまいます。
指導助言は難しいです。
助言を書く先生の時間も限られています。
ふつうは一行程度にします。
あまり書けない子どもが3行も書いたら、先生は、その感想を1ページ書くこともあります。
子どもは驚きます。「なぜ、先生は、ちょっとしか書かないぼくの日記に、こんなにたくさん書くのだろうか」という思いがでてきます。
先生は「あなたに関心があるよ」というメッセージを発信しているのです。
その後、その子はどうなるでしょうね。