教育随想(授業づくり・集団づくり・児童理解)

実践、反省、さらに実践・・・

子供たちを相手にして、悩んだり迷ったりしている先生に読んでいただきたいと思っています。
迷うことが、悩むことが先生の良心であり、最も大切な能力ではないのでしょうか。
 わかったことよりわからないこと、できたことよりできなかったことに 心を向けていく先生は 素敵だと思います。

教育随想 1010回 小学5年国語「たずねびと」その1 物語の構造

物語文の指導の場合、短い文の中に大切な内容が入っています。
子どもたちか自力で読み進めるためには、言葉で引っ張りまわさないことです。
場面ごとにキーワードを見つけて指導します。
今回、5年生の「たずねびと」の教材について、大まかですが読み取りの指導あり方についてお話します。


まず、指導書の言葉を引用します。
「本単元では、人物像や物語の全体像を具体的に想像したり、表現の効果について考えたりする力を育てていきます。
人物像を具体的に想像するためには、行動や会話、様子を表す複数の叙述を結び付けて読んでいくことが大切です。
物語の全体像を想像するためには、その世界の人物像を豊かに想像すること、内容面だけでなく表現面にも着目して読むことが大切です。
お互いの考えを伝え合う中で、自分とは異なる考えや、自分は関連させなかった叙述のつながりなどに出合うことができます。」


いつもながら、わかったようなわからないような文言です。
どの単元でも通じる抽象的内容ですね。


人物の気持ち、特に、ここでは変革人物「楠木綾」の心情、考え方の変化を追います。
主人公を通して、人間の生き方の変わり方について感じ取れる教材です。
しかも、題材が平和について考えさせる問題を正面に据えています。
戦争、原爆の酷さを一人の少女の感じ方、受け止め方を通して読者に迫っていきます。


綾が変革していく上で重要な事柄を取り上げます。


最初の出会いとしての「不思議なポスター」(原爆供養塔納骨名簿)
なにもかも信じれなくなった平和記念資料館
気が遠くなりそうだが、どうしても目がはなせなくなった追悼平和記念館
最後に、綾を大きく変えたおばあさんとの出会い、原爆供養塔


そして、最後の場面は、情景描写の中に綾の大きく揺れた心を象徴している秋の夕暮れ
登場人物の決定的な変化が書かれています。
「わたしたちがわすれないでいたら」と、綾という人間、自分のあり方を語ることで、平和への願いを読者に伝えています。


上記の事柄を読みの柱として、子どもたちが綾の心情に迫れるように指導します。
ここでお断りしますが、作品論の立場で指導しません。
読者である子どもたちは、作品論から読みの世界に入りません。
目の前の文章、その事実から綾への心情の世界に自分を重ね合わせていきます。


重ね合わせるというのは、まず、子どもが自分の読みを大切にすることです。
その読みでもって、主人公に共感と疑問をいだくことです。
綾の気持ちを理解できるところもあるけど、なぜ、そうしたのかを疑うところもあります。
これは「登場人物に読者としての自分を重ねる」ことです。


これから、何回かに分けて場面ごとにお話します。
偏見と独断をもって、読者としての私が、綾という登場人物に近づいきます。

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