教育随想 1009回 国語5年「からたちの花」学びの入口
二学期の最初に指導する詩の授業です。
子どもの実態に配慮して進めます。
詩は、作者のなかで湧き上がってきた感動を、自分の言葉で、自分のリズムで書き表したものです。
そして、この詩は、「繰り返し」「暗喩」「七五調」「呼びかけ」といった技法を使っています。
繰り返してでてくる言葉や文がとても多いです。
繰り返す言葉は、明らかに作者が読者に向かって伝えたい内容であり感情です。
作品の立場からすると、それらの技法を学習させたいという気持ちが優先されそうです。
それらは、子どもたちが作品の中に入ってきて、行き詰った時に必要な技法なのです。
最初から技法を指導すると、子どもたちは、自分の前の詩を技法というフィルターにかけて味わうことになります。
登山の時、頂上を目指したい気持ちはだれにでもあります。
しかし、どの道から、どのようなコースを歩むかは、登山者の実態に合わせます。
「からたちの花」の学びの入口をどこにするかを考えます。
全員の子どもたちが関心のあるところから始めます。
それは音読です。
詩は歌です。
作者が歌っているのです。
だから、読者は、まず、自分で声を出して歌います。
繰り返し、声にだすことで作品の内容を体に導き入れます。
①まず、独りで感じたように音読する。
②一斉に音読を合わせない。
合わせると子どもの感じ方が友だちの感じ方に影響されます。
③何回も声にだして読む。(決して友だちと声を合わせない条件)
④音読を繰り返していくうちに、教科書から少しずつ目を離す。
⇒教科書を見る時間を減らす(子どもによっては覚えてしまう)
⑤指名して子どもの音読を聞かせる。(数名)
できるなら音読の仕方が異なる子どもにする。
友だちの音読を聞いて刺激を受け、自分の音読を振り返る。
このようにして、詩は頭(論理)から入れるのではなく体に直接しみこむように入れます。(味わうということ)
そして、個人の読練習を十分に実施したあとに指導者の問いかけ。
「みなさんは、何回も詩を読んでいるうちに、心の中にいろいろな景色が見えてきたのではないでしょうか。」
「ここで質問します。この詩はからたちの花について書いています。
ところが、この中に、からたちの花、とげの中から作者が顔をだし ているところがあります。どこですか。」
そうですね。5連の言葉ですね。
「からたちのそばで泣いたよ。みんなみんなやさしかったよ」
ここは他の連とは違いますね。
作者が読者の前に姿をあらわしているところです。
そこで、5連を登山の入口にします。
①だれがないているのか。
②なぜ泣いているのか。
③みんなのやさしさとは、どのようなやさしさなのか。
これらのことを子どもなりに想像して、友だちと考えを交流させます。
つらいことがあったんだなあ、いじめられたのかな、けんかしたのかな、誰かに叱られたのかな・・・子どもたちの想像は膨らんできます。
さらに進めます。
「からたちの花には、作者の気持ちが表れていますね。(叙情詩)
4連の「からたちも秋は実るよ」
「も」がついているのは、他に何が実るのかな」
・・・他の植物の実、いや、もしかして自分のことかも・・・
「まろいまろい金のたまごだよ」から成長、完成を感じさせます。
「まるい」ではなく「まろい」という表現。
角がとれて円くなるという意味。
・・・作者の成長かな・・・
ここまでくると、子どもたちは、この詩のなかに作者の姿や心情を見い出してきます。
・・・からたちの花、作者のような気がする・・・
そうなると「とげ」とは何をあらわしているのか。
からたちの花にとってのとげ。
作者にとってのとげ。(苦しみ、困難。悲しみ、辛さ、我慢等)
ここまで読んでくると、
最初の「からたちの花がさいたよ」の一連と最後の六連のからたちの花がさいたよ」は同じ読み方になるだろうか。(問題提起)
六連の「からたちの花がさいたよ。白い白い花がさいたよ」は
五連の「・・・ないたよ。・・・やさしかったよ。」のあとの言葉になることに気付く。
この作者が自分の気持ちを強く伝えようとしていますね。
どこでわかりますか
最後の「よ」という言葉ですね、
★終助詞の「よ」主体の意志を強く相手に伝えようとする気持ちを
表します。
以上が教材の入口でありの学びの道です。
ちなみに、この詩の背景には、白秋と山田耕作が関係しています。
作品の背景として調べてみてください。