教育随想 648回 嫌いな教材こそ、授業者の腕の見せ所
ある先生が、この教材はあまり好きではないので、教えにくいと言われました。
その先生は、それをもって、この教材はあまりよくないとも言われました。
料理するとき、どのような具材であっても、それを生かすための調理方法を考えます。
いろいろと試してみることで、具材の良さが表れます。
調理師の腕次第です。
教材も同じです。
特に、国語作品においては、指導者の好き嫌いが表れます。
嫌いなまま子どもたちに教材を提供したらどうなるでしょうか。
子どもは好きになるでしょうか。
指導者以上に好きになることは少ないでしょうね。
私にとっても、どうも好きになれない教材がありました。
教材を指導者の一方的な好き嫌いで評価してしまうことに恐れを持ちました。
私の力不足で、その教材の本質、おもしろさが見えないだけではないかと思いました。
実際に、その通りでした。
その教材を何度も読み直し、数十回、一週間かけて読み直しました。
その結果、今まで気づかなかった作品の価値が見えてきました。
「あっ、そうか。そういうことだったのか。これが主題だったのだ」
教材に入り込んでしまうと、夜を明かすこともありました。
料理のレシピを活用して、調理するのもいいでしょう。
しかし、時には、レシピなしで試行錯誤してみると、具材の良さを見つけることができます。
おもしろくない教材ほど、指導者の努力によって、面白いものにすることができます。
指導者の教材の良さの発見過程が、そのまま子どもの学びの過程になります。