教育随想(授業づくり・集団づくり・児童理解)

実践、反省、さらに実践・・・

子供たちを相手にして、悩んだり迷ったりしている先生に読んでいただきたいと思っています。
迷うことが、悩むことが先生の良心であり、最も大切な能力ではないのでしょうか。
 わかったことよりわからないこと、できたことよりできなかったことに 心を向けていく先生は 素敵だと思います。

教育随想 599回 3年国語「ちいちゃんのかげおくり」教材の展開角度

私の指導案の最初の部分を抜粋します。


指導目標
◎情景や登場人物の様子、心情、その変化について、叙述に基づいて想像する
 ことができる。
〇読み取ったことについて、友だちと感想や考えを出し合い、その相違について
 共有しあうことができる。


教材について
 ○「かげおくり」という遊びを題材にして、戦争の悲惨さ平和を願う作者の思いが綴られた作品である。
 ○本文は、五つのまとまりから構成されており、特に最後の「それから何十年」かたった町の様子は、現代に生きる私たちに平和の大切さと、それを守ることの大切さを示している。
 ○作者は、戦争の悲惨さや戦争反対を直接表現していないがちいちゃんの日常が壊されていく現実を描くことをとおして、戦争の残酷さ、痛ましさを訴えている作品である。


 ○子どもたちにとっては教科書で出あう初めての戦時下状況文学作品である。
当時の時代背景を正確に把握することは難しいと思われる。
戦争に巻き込まれ幸せに生きることができなかったちいちゃん。
ちいちやんの行動を通して、戦争という非人間的な本質を表現している。


 ○一の場面と四場面とは対比されている。
一場面は、まだお父さんもお母さんも生きていて、家族が楽しくかげおくり
をしている場面。楽しくといっても、出征の前日、お父さんが明日から戦争
に行かなければならないので、家族の切ない思いがこめられているかげおく
りでもある。


四場面は、家族そろって仲良くかげおくりをしているような平和で明るいイメージとして語られているが、それは、ちいちゃんの幻想である。
戦争で傷を負い、飢えて死んでいく間際のちいちゃんの幻想である。
最後に「小さな女の子の命が、空にきえました。」と知らされ、いっそう切なく悲しいものになる。
明るいお花畑のイメージであればあるほど、逆に悲しみを訴える対比的な場面である。


教科書の手引きでは、最初に一場面と四場面の比較から入っている。
問題設定のための比較である。
しかし、一場面から順に深く読み取っていくなかで、四場面において、初めて一場面と比較するのが自然だと考える。


 ○五場面では、何十年がたち、いっぱいの家も建ち、ちいちゃんがかげおくりをしたところは、小さな公園になっている。
平和のイメージである。
しかし、そこには、ちいちゃんはいない。
ちいちゃんのしあわせもない。
戦争はただ命を奪うだけでなく、人間一人ひとりの、ありえたはずの未来を奪う。
そこに、戦争の根本的な非人間性・悲劇性がある。


 ○この作品で、もう一つ大切にしたいことがある。
それは、空襲の中を家族が来てくれることを信じて生きようとするちいちゃんの強さである。
おばさんについて行かないで一人で防空壕に残る。
ちいちゃんの強さと家族への強い思いに心を打たれる。
戦争という逆境においても人間らしく生きようとするちいちゃんの姿に心ひかれる。



3.指導にあたって
認識の力
★戦争という条件のなかで生きる人間の行動と心情を考える力を育てる。
                          ➡条件的な見方
★「もし・・・でなかったら」という仮定のもとに考えて深める力を育てる。
                         ➡過程・予想・対比
★感想文を通して表現の方法を強化する。


認識の内容
○戦争に巻き込まれ、幸せに生きることができなかったちいちゃんの気持ちを中心に読んでいくことで、戦時中の様子、当時の人々の様子や気持について子どもたちが考えることができるようにする。
さらには、一場面と四場面との対比を通して、戦争の非人間的なものについて感じ取れるようにしたい。
 ○自分がちいちゃんだったらどうするかを考えたり、比べたりすることで、戦争の恐ろしさについて考え、平和について考えをもつことができるようにする。
 ○「くり返している言葉を読む」「場面と場面を比べて、変化したことを探し出す」「似た言葉を比べて読む」などの読解スキルを習得させたい。
 ○作品中の挿し絵を手がかりに文章と比べさせながら、ちいちゃんの心情や周囲の状況をつかませる。


逆境に耐え抜こうとしたちいちゃんの底にあるのは、家族への信頼である。
戦争下であっても、逆境のなかにあっても、人間の生きる逞しさを捉えさせたいと思う。

×

非ログインユーザーとして返信する