教育随想(授業づくり・集団づくり・児童理解)

実践、反省、さらに実践・・・

子供たちを相手にして、悩んだり迷ったりしている先生に読んでいただきたいと思っています。
迷うことが、悩むことが先生の良心であり、最も大切な能力ではないのでしょうか。
 わかったことよりわからないこと、できたことよりできなかったことに 心を向けていく先生は 素敵だと思います。

教育随想 458回  シールの効能 「ほしとり表」の活用

教室で学習や生活のなかでシールを使われることは多いと思います。
私は、基本的には、シールを使うことが少なかったです。
あまり必要としなかったからです。
シールは対処療法に使用する薬のようなものです。
効果がある反面、副作用もあります。
しかも、長期間ではなく短期間だけ使うようにします。
シールは子どもたちにとっては、それなりに魅力あるものです。


頑張った記録としてシールをはります。
いろいろな頑張り表ですね。
学校の挨拶運動では、学級以外の友だちに挨拶をしたらシールをはります。
そして、そのシールが棒グラフのように高くなっていきます。
子どもたちは、朝の挨拶を頑張ります。
「今日は、シール4枚はったよ」と嬉しそうに語ります。
挨拶の意味もわからず、挨拶はシールはりが目的になっています。


漢字や計算の宿題をしてきたらシールをはるのもよく見かけますね。
中には、忘れ物をしたらシールをはる、マイナス結果を表にしています。
よく忘れる子どもは、自分の失敗を友だちの前にさらすことになります。
シール表が張られている限り、自分の過去の足跡が残ります。
今日から頑張って忘れ物をしないようにしようと思っても、過去の忘れ物は掲示物として目に見えるようになっています。
失敗歴が消えないのです。


シールは、決して悪いとは思いません。
シールを使う時は、目的を明確にします。
子どもたちをそのシールの活用によって、何を育てたいのか、ねらいを考えます。。
さらに、シールの効能は、有効期限があります。
長期間は効果が薄れてきます。
短期間で期日を区切ることが大切です。


私は、一つだけシールを使ったことでおもしろかったことがあります。
それは、「ほし取り表」です。
期間は一か月です。
子ども一人ひとりが、「ほめられた」時と「しかられた」時に、それぞれ青と黒のシールをはります。
棒グラフにします。
ほめられた時の「ほ」(青シール)   しかられた時の「し」(黒シール)をはります。
縦二列にして上にはっていきます。


すると、青色のシールが多い子ども、黒色のシールが多い子ども、青と黒のシールがだいたい同じ数の子どもがでてきます。
当然、子どもたちは、青色シールが多くて黒シールが少ないほうがいいと思っています。
二週間、子どもたちにシールをつけさせます。
そのあと、学級指導をします。


それぞれの子どもたちにシールを見て振り返らせます。
「ぼくはしかられてばかりだ」(注意も叱られたの中に入れる子)
「ほめられることばかりで叱られたことはほとんどないけれど、それでいいのかな」
「わたしは、ほめられることも多いけど叱られることも多いから、あんまりよくないのかな」
子どもたちは自分なりに分析します。


私の結論は、ほめられることとしかられることが同じくらいがいいと話しました。
一番成長する子は、叱られて頑張り、それを褒められる。
この繰りかえしだねと話しました。


ほめられたいためにほめられることしかしない子どもは気の毒です。
もっと思い切って自分をだせばいいと思います。


このほし取り表には、もう一つのねらいがあります。
私にとっては、こちらのほうが重要なのです。
それは、子ども一人ひとりの受け止め方の問題です。
その子を褒めているのに、ほめていると受け取っていない場合。
その子を叱っているのに、叱られていないとする場合。
叱ったつもりはなく、少し注意しただけなのに叱られたと受け取る場合。
私のほめ方、叱り方に対する子どもたちの受け取り方を知ることが大きなねらいなのです。

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