教育随想(授業づくり・集団づくり・児童理解)

実践、反省、さらに実践・・・

子供たちを相手にして、悩んだり迷ったりしている先生に読んでいただきたいと思っています。
迷うことが、悩むことが先生の良心であり、最も大切な能力ではないのでしょうか。
 わかったことよりわからないこと、できたことよりできなかったことに 心を向けていく先生は 素敵だと思います。

教育随想 376回 人間のくらしとつながる「月の理科学習」

単元目標(学習指導要領より)
○ 月や星を観察し、月の位置と星の明るさや色及び位置を調べ、月や星の
特徴や動きについての考えをもつことができるようにする。
月は日によって形が変わってみえる。
1日のうちで、時刻によって位置がかわる。
星の集まりは、1日のうちでも時刻によって並び方は変わらないが 位置が変わる。


天文学習に、月や星の学習があります。
この単元は指導者にとって教えにくい教材です。
そもそも子どもたちの生活にとって、太陽や星は見上げることがあっても、月の動きに関心をもつことはほとんどありません。
子どもたちはスマホやゲームで下を向く生活が多いなかで、自分の上空を見上げることがあるのでしょうか。
満月になろうが三日月になろうが、誰もたいして知ったことではありません。
太陽は人間の一日の生活と密接に関係しています。
星は、時々見上げて癒されることはあるでしょう。
しかし、月の動き、月そのものはどうでしょうか。


日本人は、星との付き合いよりも月とのつながりの方が長いです。
明治の近代化以降、街に街灯がつくようになってから月の役目は遠のきました。
街灯がつくまでは、月は地球を照らすあかりでした。
太陽が西のかなたに沈み夜がおとずれるとき、月は夜の世界を映し出す大切な
あかりでした。
生活になくてはならない光でした。
お祭りなどの行事は、満月に近い日に行われました。
月の明るさが人々の生活を潤いのあるものにしました。


科学はその対象から感情を削除することで発展してきました。
しかし、そのはじめにあるのは、人間の自然に対するロマンでした。
月は電気のない世界にとって、なくてはならない自然でした。
 今の子供たちは、月にほとんど関心がなくなっています。
月夜のあかりで歩くことはなくなりました。
天文学習は、子どもたちにとって、月や星は無味簡素なものとして扱われています。
そこで、私は、月と人間の歴史を最初に学習してきました。


「十五夜は秋の美しい月を観賞しながら、秋の収穫に感謝をする行事です。
「中秋の名月」と呼ばれています。
旧暦では7月~9月が秋にあたり、初秋は台風や長雨が続きますが、仲秋(※)は秋晴れも多く空が澄んで月が美しく見えます。
そこで、中国から伝わった月見を取り入れ、平安貴族が月見の宴を催して風雅を楽しむようになりました。
やがて、月見が庶民に広がると、実りに感謝する行事になっていき、芋類の収穫祝いをかねているため、「芋名月」という別名で呼ばれるようにもなりました。」
                                 資料抜粋


日本では太古の昔から月を神聖視していたようです。
十五夜ではありませんが、縄文時代には月を愛でる風習があったようです。
十五夜の月見が盛んになったのは、平安時代です。
貴族の間で広まりました。
月を見ながら酒を酌み交わし、船の上で詩歌や管弦に親しむ風流な催しでした。しかも、貴族たちは空を見上げて月を眺めるのではなく、水面や盃の酒に映った月を愛でたということです。
庶民も広く十五夜を楽しむようになったのは、江戸時代に入ってからだといわれます。
貴族のようにただ月を眺めるのではなく、収穫祭や初穂祭の意味合いが大きかったようです。
十五夜のころは稲が育ち、間もなく収穫が始まる時期。
無事に収穫できる喜びを分かち合い、感謝する日でもありました。
ここから秋まつりが生まれてきました。


最初の1時間の学習は次のように実施しました。
めあて
昔から、人は月をどのように思ってきたのだろうか。
月と人間のつながりを考えてみよう。


①みんなは月と言えばどんなことが思い浮かぶかな。
・発表する。
②昔の人たちは、月をどのように思っていたのだろうか。
・ノートに書いて発表する。
・なぜ、そのように考えたかを発表する。
 祈りの対象 癒しの対象 
 明かりの対象 占いの対象
③ことわざや行事から考えてみよう。
「花鳥風月」・・・自然の美しい物
「月夜にちょうちん」・・・ちょうちんが不必要なくらい明るい月
「月見」 すすき(稲穂)  だんご(子孫の繁栄)月のこと
 ススキは稲穂の代わり
留意点
それぞれのことわざから人々は月をどのように感じていたかを捉えさせる。
➡それぞれについて子どもたちに十分に話し合わせる。


④先生の話
昔の人にとって、月は人間の命を宿すものであった。お祈りの対象である。
月を「愛でる」(めでる)習慣
愛でるとは、美しいのもを見て楽しむという意味があります。


 満月の月明かりや・・・祭りや集会
満月の明るさを利用して人々は夜の活動を行っていました。
月をいろいろな呼び方をして親しみをもっている私たち。
十五夜 おぼろ月 夕月など


天文学習は、「しらべましょう」「くらべましょう」「たしかめましょう」「きろくしましょう」と観測主義で貫かれています。夜間の観察は難しいです。
月の形、動き方を教えることはできます。
でも、月と人間、星と月 太陽と月。
人間の生活との関わりから天体に対する興味関心が生まれてきます。
科学の出発は、人間の営みからです。

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