教育随想 32回 耳で見る(聞くではなく) 返事は
授業にとって最初に指導するのは、「返事」です。
ただし、声の小さな子どもに対して「もっと大きな声で返事をしなさい」とは言いません。言ってはいけないのです。返事の声が小さいという事実の原因が大切だからです。
4月に子どもたちと出会いますね。
一週間は、出席簿をもとにして一人一人の名前を呼びます。そして返事をさせます。
「みんなの名前と顔を覚えるために名前を呼びますから、返事をしてくださいね。」と声をかけてから実行します。
返事指導を通して、「はい」という言葉、音声からいろいろな子どもについての情報が伝わってきます。
元気のある「はい」とそうでないもの。
日によって大きさが変わる「はい」
先生に何かを伝えようとする返事の「はい」
返事は、子どもたちの意欲や内面の表れですから無理をしないことです。
返事の中に子どもの心の顔が見えます。
「耳で見る」のですね。耳で聞くのではありません。
子どもたち一人ひとりの4月の返事が7月に入ると変わってくるような指導をします。それは、意欲です。学習意欲です。先生に対する信頼です。
信頼は、先生への親しみ、尊敬がもとになります。
さらに、付け加えると、おもしろさです。
先生といっしょにいると「おもしろい」という気持ちを持たせることです。
返事した子どもに一人ずつ、気づいたことをコメントするのもいいですね。
「今日は、元気がいいね」「ちょっと寝坊したかな」「昨日休んでいたけど、今日は大丈夫かな」「好きなスポーツは」「好きな色は」など、子どもたちとつながっていきます。
返事を求めながら、短くコメントを入れます。
返事を通して子どもと仲良くなります。
元気のよい返事を返す子がいると「どうしたの、何かいいことあったのかな」「気持ちのよい返事だね。先生も元気になりそうだ」と声をかけます。
逆に、集団に圧力を感じている子どもの返事は小さいです。
でも、「大きな声で」と要求するのは、さらに、その子に圧力をかけることになります。
返事はたった二文字の言葉です。
しかし、その二文字で人と人はつながっていくということに気づかせます。
「はい」は、人と人のかけ橋
「はい」は、あなたの心のスケッチ
「はい」は、お互いを元気にさせる栄養剤
「はい」は、聞くのではなく見えるもの
「はい」は、自分の心を開くとびら
など、「はい」という返事を多角的に考えさせます。
たかが返事、されど返事。
ちなみに、先生の返事が教室の誰よりも元気であることを忘れませんように。
間をあけないようにします。
ためらいの返事は、子どもたちを不安にさせます。
返事は、子どもたちの意欲のバロメーターですね。