教育随想(授業づくり・集団づくり・児童理解)

実践、反省、さらに実践・・・

子供たちを相手にして、悩んだり迷ったりしている先生に読んでいただきたいと思っています。
迷うことが、悩むことが先生の良心であり、最も大切な能力ではないのでしょうか。
 わかったことよりわからないこと、できたことよりできなかったことに 心を向けていく先生は 素敵だと思います。

教育随想 316回 音読の苦手な子 授業のどの場面で読ませるのか


今、教科書を音読することが苦手な子どもがいるとします。
先生は、音読が苦手な子どもを全員学習の場で生かしたいと願っているとします。
そこで、あまり深く考えずに授業の最初に指名して読ませたとします。
どのような現象が表れるでしょうか。



授業の始めは、一応どの子もそれなりに意欲が充満しています。
一刻も早く学習を軌道に乗せたがっています。
その時点ですから、次のような子どもの心の声が聞こえてくることがあります。


「あんな子に読ませなくてもいいのに」
「あんな読み方をされたらおもしろくない」
という不平不満が教室内に表れます。(声には出しませんが)



はじめに指名されて読むことになった子どもはつまりながら読んでいます。
自信がないうえに全員の前で読まされることで、さらに自信がなくなります。
素晴らしい作品を学習するとき、はじめは上手な子どもに読ませることで雰囲気がでてきます。学習ムートが高まります。



それでは、苦手な子どもは、いつ読ませるのでしょうか。
それは、読みの学習が終了した時に読ませます。
子どもたちは作品の学習に満足していますので、うまく読めない子どもに対してもゆとりをもって聞くことができます。



さらに、次のようなことも実践できます。
「明日の国語の時間、あなたに本読みをしてもらうからお願いしますね。読むところは、ここだからね。」と、読む範囲を指定して次の日を迎えさせます。
子どもは家で練習してきています。結果は期待どおりになります。
そうなのです、音読は前日に苦手な子どもに予約しておきます。
予約したことは、他の子どもたちには内緒にします。


読んだあと、今までの読み方よりも上手になっている、前もって読む練習をしてきた努力を誉めます。友だちに言わせるとさらに効果的です。
友だちよりも遅れている子に連帯感、所属感を植え付けることになります。



これは音読だけでなく、学習の苦手な子どもにどの場面で指名するかは、とても大切な判断なのです。安易に指名してはいけません。
前提として、その子が質問に答えられる、意見が言えることです。
指名して絶句するような場面を作ってはいけません。


一人ひとりを大切にするということは、先生の子どもに対する指名のタイミングにかかっています。集団の中で、それぞれの個を生かすとは、謳い文句ではなく、常に、具体的な行動にかかっています。

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