教育随想(授業づくり・集団づくり・児童理解)

実践、反省、さらに実践・・・

子供たちを相手にして、悩んだり迷ったりしている先生に読んでいただきたいと思っています。
迷うことが、悩むことが先生の良心であり、最も大切な能力ではないのでしょうか。
 わかったことよりわからないこと、できたことよりできなかったことに 心を向けていく先生は 素敵だと思います。

教育随想 213回 授業の導入 あれ? ひっかかりをつくる


4年生の算数の学習に「大きい数のしくみ」があります。


「億や兆の単位を知り、十進位取り記数法について理解を深め、数を用いる能力を伸ばす。」というのが単元目標です。
大きい数は、子どもたちにとって量感を伴って理解するには限界があります。


しかし、社会科の資料を読み取るときもそうなのですが、日常生活に引き寄せて、わかりやすい数(量的に実感できる数)にしていくことが必要です。
教科書には、4つの都道府県の人口が示され、数字を読む学習になっています。
たとえば、北海道の人口が5465451人と示されています。
この数字を意図的に読ませようとしているのですが、それだけでは、数字への親しみがわきません。


教材研究をしていると、どうしても、個人的にいろいろな疑問を持つようになります。教科書をしっかりと読み込んでいくともっと知りたいこともでてきます。
まず、この北海道の人口は何年の調査なのだろうかという疑問です。
調べると、平成22年です。かなり古いものになっています。
それでは、最近では人口が増えているのか、それとも減っているのという疑問が生まれてきます。
2018年の調査では5320523人で減少しています。
そうなると、他の都道府県の人口の推移が気になってきます。
そうしていると算数の学習から離れていきます。しかし、それが楽しいのです。


教材研究をしていると、教科書の世界を飛び出して外の世界に入っていきます。



教科書の人数で気になったことが出てきました。
すべて、人口の数が一の位まで示されていることです。
これは、きわめて不正確です。
日本の人口が「128373879人」と書かれています。
これも一の位まで示されています。
これを授業の導入に持っていきます。


教科書の日本の人口「128373879人」は正しい数字なのだろうか。
この問題を提示すると、子どもたちは「えっ、どういうことなの」と立ち止まります。
何の疑問も持たずに数字を見ていた子どもたちにひっかかりを与えることになります。
①正しい、正しくない、どちらかわからない の立場を明らかにする。
②理由をノートに書く。
③話し合いをする
結論として


「正しくない」「一の位」まで正確に表すことは難しい。人口は一の位まで表すことはできない。ある瞬間の人口であることに気付かせる。
調べてみると、平成28年を取り上げると
年間死亡者数 約130万人 年間出生数 約100万人となっています。
人口は減少していることがわかります。
この数字を子どもたちに近づけるために一日あたりの数に置きかえます。
死亡者数 3561人/日  出生数  2739人/日となります。
子どもたちは、この数字に驚きます。
一日のなかでも人口が変動していることがわかります。
さらに1時間、1分間あたりの数を算出します。
そうなると、人口が一の位まで示されているのは、ある瞬間の人口でしかないということに気付きます。
この問題は、やがて概数の意味を考えるときの参考になります。


実生活は概数で示されていることのほうが多いですね。
教材研究は、子どもの教科書から先生が飛び出していくことです。
各教科の教科書をまず、詳しく読むことで、いくつかのひっかかりがでてきます。
それらを調べます。
ネットから図書館で調べたり、現地に出かけることもあったりします。
先生自身が教材におもしろさを感じ、それを手掛かりとして学問の世界に飛び込んでいきます。
地道な教材研究、子どものためではなく先生自身のための研究が出発です。

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