教育随想(授業づくり・集団づくり・児童理解)

実践、反省、さらに実践・・・

子供たちを相手にして、悩んだり迷ったりしている先生に読んでいただきたいと思っています。
迷うことが、悩むことが先生の良心であり、最も大切な能力ではないのでしょうか。
 わかったことよりわからないこと、できたことよりできなかったことに 心を向けていく先生は 素敵だと思います。

教育随想 201回 話し合い学習を通して子どもの学びを育てる

当時の記録から
「私と子供たちとのふれあいは、ほんのりと温かいものであった。それだけで毎日が充実しているように思った。しかし、これだけでは、子供も私も高まっていかない。子供たちの見方、考え方、感じ方を高めて自立させなければならないと考える。その一つの方法として、かねてから考えていた集団による話し合い学習を核とした授業づくりをしてみようと思った。それは先生中心の学習から子供中心の学習に変えていくことを意味している。」


私が若い時に、話し合い学習と称する参観授業でいつも疑問に思うことがありました。話し合いにこだわるあまり、その学習内容が深まっていかないことでした。おしゃべりだけで終わっていることも多くありました。
でも、子どもが話し合っていると、子ども中心の学習のように参観者から見られることが多かったです。
「よく発言していますね」「全員が発言していますね」「みんな元気に参加しています」という参観者の声が聞こえてきました。


あるときは、できる子どもが中心になって(発言力の強い子ども)話し合いを進めているように思いました。
そして、その話し合いの空気がどことなくぎこちなく、堅いものでした。
聞きあうというよりは、ひたすら言葉を発しているだけのようにも思えました。
子供同士の心の交流を感じることが少なかったように思います。


当時、私の指導はどこかでかたちを追っているところがありました。
しかし、それは仕方がないことでした。
かたちを似せることで、かたちに近づくことで、問題点が浮き彫りにされると考えました。
実践の初期は、かたちから入ってもいいのではないかと考えています。
そこからかたちを抜け出るようになればいいわけです。


記録から
「話し合い学習は学習を深めることと同時進行である。話し合うことは聞きあうことであり、相手を尊重することである。次の点について、授業の中で指導を始めることにする。」


「話し手は、静かになるのを待ってから話す。」
当たり前のことが最も難しいですね。


話し手と聞き手の立場を明確にします。
話し手はいつも一人であること、聞き手は多数であることを意識させるようにしました。
しかし、そんなに簡単なものではありませんでした。
話し手が発言しているときに、自分の考えをつぶやいたり、野次馬のように話し手の中に割り込んできたりします。
黙っていることができないのが子どもでした。


そうなると、子どもたちのつぶやきを押さえなければなりませんでした。
しかし、づふやきも大切な子どもたちの考えです。
子どもたちは自分の意見を聞いてほしいという気持ちが強かったです。
まず、先生が子どもたちの聞き手になって、つぶやきを聞いていかなければならないことに気づきました。


そこで、私は、つぶやきタイムを授業の中で設定しました。
子どもたちが自分の意見を言いたくてうずうずしているときには、「先生に向かって言ってごらん」と指示して言わせました。
はじめのうちは、発言する子も少なかったので私も聞くことができましたが、話す子どもが多くなってくると、発言が重なり合って聞きづらくなってきました。「え、今のもう一回言って」と聞き直すことが多くなりました。


そのうちに、子どもの重なりが多くなると、私は、相づちたけをうつようにしました。すると、子どもが「先生、本当に聞いているのですか」と言葉を投げかけてきました。
「いや、みんなが一度に話すので、少ない内は聞けたけど、多くなると聞けなくなったよ。」と私は話しました。


このような活動を何回が続けているうちに、子どもたちの重なりが少しずつ減るようになってきました。自分の意見を聞いてもらいたいという思いが、話すタイミングをずらすようになりました。
他の話し手に気遣うことで、自分の意見を聞いてもらおうとしてきました。


重なりがなくなったときに「話し手はやっぱり一人だよね。」と話しかけました。
自分の意見を聞いてもらいたいとする行為は、他の意見も聞かなければならないことに少しずつ気づいていきました。
このときに、私も、子どもたちが話しているときには、話しかけないようにしました。


話し手は一人というのは、簡単なようで難しいですね。
特に、低学年では、先生の話している時でさえ、ずっと横から自分の考えをだしてくるものです。
しかし、「つぶやきコーナー」の時間を多くもつことで少しずつ静かな聞き手になってきました。
「先生は耳は2つです。一度に二人まで聞ける時もあるけど、3人より多くなったらだめだなあ、聞けないよ」と低学年の子どもに言います。「それがだめなら、鼻の穴から聞くしかないなあ」と、とぼけていました。


話し手は一人となると、話し手の発言の仕方が問題になってきます。
聞き手にとって話し手がなにを言いたいのか明確にしてもらわないと、最後まで聞きたいとは思いません。
「結論から先に話す」という話し手の姿勢をいれるようにしました。


話し合い学習を授業の中に取り入れるためには、「話す・聞く」の在り方が大切になってきます。
学習指導を通して、話す・聞くがどのようなことなのかを指導していくことになります。
次回からは、話す・聞くの指導についてお話します。

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