教育随想(授業づくり・集団づくり・児童理解)

実践、反省、さらに実践・・・

子供たちを相手にして、悩んだり迷ったりしている先生に読んでいただきたいと思っています。
迷うことが、悩むことが先生の良心であり、最も大切な能力ではないのでしょうか。
 わかったことよりわからないこと、できたことよりできなかったことに 心を向けていく先生は 素敵だと思います。

教育随想 199回 リーダーを育てる(4)  空気をつくるリーダー

いくつかのリーダーをあげてきましたが、子どもたちに、誰でもリーダーになれることを伝えたかったのです。
決して、人の前に立つことだけがリーダーでありません。
世の中は、すべての人々がなんらかのリーダーとしての振る舞いをしています。


まず、やってみようと思って先頭に立ってまとめる人がいます。
人知れず組織のために動いている人がいます。
人々の前にたって、提言する人もいます。
個性が動くところ、すべての人がリーダーシップを発揮しています。
そのことをお互いが認め合える社会であってほしいと願っています。


学級も小さな人間社会です。
その集団の中で自分を磨き、人と学びあう姿勢を育てることが教育の一つだと考えます。したがって、子どもたちがリーダーという存在を知り、それになっていくことが、自分の存在価値に気づくことにもなると思います。


今回は「空気をつくる」ことに視点をあてます。
子どもたちの中には、学級の空気を明るく、和やかにする子どもたちがいます。
おどけて見せる子ども、明るい冗談を言って友達を笑わせる子どもがいます。
自然な形で集団に溶け込んでいます。
空気をつくっている子どもたちです。


しかし、それだけではありません。
授業の時、明るい声で明瞭に話す子ども。
名前を呼ばれたらだれよりも大きく明るい返事をする子ども。
「わかりません」と、包み隠さず友達の前でさらけ出す子ども。
掃除のときに、誰よりも汗を流している子ども。
その空気が周りの友達にエネルギーを与えています。


そして、最も大きな空気を作っているのは、先生です。
先生こそ、子どもたちが活動している学級の空気を明るくしています。


その一つは「笑顔」です。
どうしても何かを考えたり仕事をしていたりするときは、しかめっ面になっていることがありますが、意識して笑顔で子どもたちに対応したいものです。


笑顔と言っても笑っていることではありません。
言葉として、「ほほ笑み」「柔和な表情」というほうがいいかもしれませんね。
子どもたちが先生に話しかけてきたとき、その子を柔らかい眼差しで受け止めます。言葉が先ではありません。
柔和な眼差しで子どもと対応します。


病院で医者に出会うとき、診察室に入って最初に気になるのは、担当の医者の表情ですね。厳しい目つきをされると少し引いてしまいます。
でも、「どうされたのですか」と優しく受け止めてくださったら、もう、それだけで安心、我が身をお任せできますね。


子どもたちを目で受け止めるようにします。
子どもたちの活動の様子を見ているときも同じです。
薄目をあけてほほ笑むように見てください。
そうすると、不思議なことに、子どもたちをゆとりをもって見つめることができます。
反対に、あらさがしをするような厳しい目つきをしていると、自分の心が硬直していることがわかります。
先生の眼差しを時々気にかけながら活動している子どもたちは、眼差しから放つ空気に左右されています。


黒い雲が垂れ込めた朝、先生の最初の挨拶が子どもたちを明るくします。
先生の服装も空気ですね。


もう一つは「振る舞い」です。
先生の振る舞いは教室を支配します。
レストランに行くと、とてもきもちのよい空気を感じることがあります。
店員の方がきびきびとした動きを見せています。
席に座るやいなや、水を持って注文を取りに来られます。
水がなくなると、どこで見ていたのか、すかさずつぎに来られます。


子どもたちは先生のすべての動きを見ています。
その動きがあまりにも緩慢であると、子どもたちもそのような動きを見せることがあります。
廊下を歩く子どもたちを観察していると、歩く姿で、どこの先生の学級の子どもかがわかることがあります。担任と歩き方、動き方が似てくるからです。
空気の大部分は先生から醸し出されています。

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