教育随想(授業づくり・集団づくり・児童理解)

実践、反省、さらに実践・・・

子供たちを相手にして、悩んだり迷ったりしている先生に読んでいただきたいと思っています。
迷うことが、悩むことが先生の良心であり、最も大切な能力ではないのでしょうか。
 わかったことよりわからないこと、できたことよりできなかったことに 心を向けていく先生は 素敵だと思います。

教育随想179回 「ごんぎつね」と私 物語文の教材研究とその指導4回

今回は、「ごんぎつね」の一場面の後半です。


1.教材解釈
一場面後半


「ある秋のことでした。」
「二、三日雨がふりつづいた」「ごんは、外へも出られない」「あなの中にしゃがんで」
あの暗いじめじめした穴の中に体を動かすことなくしゃがんでいるごん。
三日間、ごんは、どんな気持ちで穴の中にしゃがんでいたのだろうか。
ひとりぼっち、話す人もいない、暗い穴の中。
しかも、あのいたずら好きのごんが三日もじっとしているのは、たまったものではないはずである。
「ああ、もうあきあき」「「たいくつでたまらない」と共感できるものがある。


雨があがった。
ほっとしたごん、その喜びは。
「はいでました」の言葉の中に、3日間のごんの思いが凝縮れている。


「はう」という動作、じっとしていた時間の長さ、穴の入り口の狭さを感じさせる。
「空はからっと晴れていて」「もずの声がキンキンひびいて」
「からっと」「キンキン」は、ごんの心でとらえられたものである。
自然描写の裏にごんの様子も表現されている。
ほっとして穴からはいだしたごんが、のびのびと背伸びしている様子が浮かんでくる。


すすきやかぶが、「黄色くにごった水に横だおしになってもまれています。」
ごんの目と心に寄り添って書かれている。
まるで、ごんの先を暗示しているかのようである。
南吉は、情景描写が巧みな人である。


「ふと見ると」
「川の中に人」⇒「何かいます」⇒「見つからないように」⇒「そうっと草の深い所へ歩み寄って」⇒「じっとのぞいていました」
ごんは、村人からは困ったキツネで知られている。
みつかるわけにはいかないので、十分な用心をしている。


「兵十だな」と、ごんは思いました。」
ごんは兵十のことを知っている。名前までも知っているということは・・・。
だれが何をしているのかを知っているのは、しばしば、やってきているということだろう。


「兵十は、ぼろぼろの黒い着物をまくしあげて、こしのところまで水にひたりながら、魚をとるはりきりというあみをゆすぶっていました。はちまきをした顔の横っちょに、円いはぎの葉が一まい、大きなほくろみたいにへばり付いていました。」
ごんから見た兵十の紹介である。
なりふり構わないで働く兵十の姿が浮かんでくる。
ごんにとって、兵十は少し親しみのある人間なのだろう。


ごんは何に興味をもったのだろうか。
水かさが増して、ごみまでいっぱい入っている。
「白い物がきらきら光っています」きらきら光る魚のはら。
そうはいっても、ごみも一緒に入れているから、中に入っているものもわかりにくかったはず。ごんは光りものに興味をもっている。あとのいわしの件もそうである。
兵十がいなくなると、「ちょいと、いたずらがしたくなったのです。」
いよいよ、ごんのいたずら虫がさわぎだした。穴の中に三日間閉じ込められた後である。



「下手の川の中を目がけて、ぽんぽんなげこみました。」
ここでもごんの賢さを感じる。
ごんは、川の上手ではなく下手に投げ込んでいる。
兵十にとっては、生活がかかっている仕事である。
兵十にとっては、せっかくとった獲物、生活の糧をなんとするのかという怒り。


うなぎがごんの首にまきついた。
「うわっ、ぬすっとぎつねめ」とどなりたてた兵十。
それを聞いて、「ごんは、びっくりして飛び上がりました。」
うなぎは、首にまきついたままはなれない。
ごんは、必死の思いでうなぎと格闘している。
「そのまま横っ跳びにどびたして」一生けんめいにげた。
見ていて、かわいらしくもあり、こっけいでもある。
視点人物(ごん)の気持ちは読者にはわかるが、対象人物の兵十のことはわからない。
兵十に視点を写すと、自分の生活の糧を奪ってしまう憎いきつねである。
憎いきつねという気持ちはごんを、火縄銃でうつまでかわにらなかった。


ごんはほっとした。
「頭をかみくだいて」「草の葉の上にのせておきました」
動物の野性的な面と人間的な面が対比される。
「のせました」ではなく「のせて・・・おきました」なのである。
しぐさに育ちのよさを感じる。やさしさを感じる。


1.本時目標
   穴からはい出したごんが、兵十にいたずらをする様子を通して、ごんのかわいらしさやかしこさ、やさしさを読み取ることができる。


2.指導にあたって
 ①「ちょいと、いたずらがしたくなったのです。」
ごんは、どうしていたずらがしたくなったのかを考える。
  いたずらの虫をしげきしたものは何か?
 ②いたずらの様子から、ごんのかわいさ、かしこさ、やさしさを読み取らせる。


Step1 めあて
「ちょいと、いたずらがしたくなったのです。」
ごんは、どうしていたずらがしたくなったのだろうか。


①1場面の後半を全員音読する。
②理由がわかるところに線をひく。
背景にあるもの
「2,3日雨がふり続いたその間、ごんは、外へもでられなくて、あなの中にしゃがんでいました。」
直接のきっかけは
何を見ていたずらをしようと思ったのか。
・兵十のこっけいなようす。
・・「白いものがきらきら光っています」
・きらきら光るものに興味がありそうだ
・ごみの中で動いているから
・兵十がいなくなったから
Step2  いたずらの様子から、ごんが、どんなきつねかを読みとろう。
①どんなきつねかわかるところに線を引く。
②発表する。
③話し合いをする。
子どもたちはごんに親しみをもつ場面です。
ごんに寄り添って、いたずらと兵十への思いを考えるのもいいです。

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