教育随想(授業づくり・集団づくり・児童理解)

実践、反省、さらに実践・・・

子供たちを相手にして、悩んだり迷ったりしている先生に読んでいただきたいと思っています。
迷うことが、悩むことが先生の良心であり、最も大切な能力ではないのでしょうか。
 わかったことよりわからないこと、できたことよりできなかったことに 心を向けていく先生は 素敵だと思います。

教育随想 149回 学習における依頼心の育成

学習に依頼心とはどういうことでしょうか。
一般的には、わからなかったらすぐに頼ることなく自力で学ぶように指導することが多いです。
それは大切なことです。
子どもたちが自力で主体的に学んでいけるようにすることが学習指導のねらいです。いつまでも大人に寄り添ってもらっているようではいけませんね。


しかし、子どもたちに自分で考えなさいと要求する前のことがぬけているように思います。
突き放す前に十分引き寄せておくことです。
子どもたちが「わからない」「教えてください」の言葉を先生や友達に自由に言えることです。気軽に言える環境、人間関係を先生が作ることです。


したがって、子どもたちには「わからないことがあったら先生を頼りなさい。たくさん頼った人は勉強が好きになりますよ。」
これくらいは言ってもいいでしょう。


学習における依頼心をしっかりと起こさせる場面を日々の授業の中で入れていきます。


算数、4月の最初の授業の時です。
子どもたちに話します。
いよいよ新しい学年の算数を勉強します。
教科書1ページを開けなさい。
わからないところはありますか?
子どもたちはシーンとする。
なければ2ページにいきます。
わからないところはありますか?
子どもたちはシーン。
さらに、次のページを、次のページを・・・・
わからないことがなったので、算数の教科書、最後まで目を通しました。
私は「わからないことがないようなので、算数の教科書の勉強は終わります。」
子どもたちは「ええー」と驚きます。
「先生、教えてくださいよ」と子どもが言います。
私は「でも、今みんなに聞いたけど、最初から最後までわからないところがないとしいうことでしたね。だったら算数を学校ですることはないでしょう。ちがうかな?」
「勉強は、みんながわからないところから始めるのだよ。わからないことがあるから先生がここにいるのだから。」


「もう一回最初のページにもどるね。読んで見てわからないこと、なんとなくわかるけど自信がないこと、少しはわかるけどすべてはわからないことなど、さがしてごらん。」
子どもたちに、自分のわからないことを発表させます。
私は板書します。
わからないことを多くだした子どもをほめます。
できるなら得意でない子どもに指名して、わからないことを尋ねます。
「わからない」という言葉をだしたことをほめるようにします。


「みんなは、どこがわからないかがわかったということは、どこを勉強したらいいのかがわかったのですね。先生も、みなさんのわからないことをもとにして進めていきます。」


授業の途中でわからなかったら先生にブレーキをかけなさい。
言葉で、手を挙げて、あるいは、顔を傾けるだけでもいいじゃない。
「先生、もう一度説明してください」
「先生、ここのところがわかりません」
「先生、やっぱりわからないよ」などなど。


どんなに時間がかかっても、4月の授業はゆっくり、じっくりと進めていきます。二学期から始めてもいいです。遅くはないです。


「明日までに、次のページでわからないことを3つ持ってきなさい。
 なければ一つでもいいですよ」


「疑問からの出発」
教科に関わらずできるようにします。
わからないことを「わからない」と先生や仲間に言える安心感が大切です。
さらに、わからないことがあったら、先生が廊下を歩いているときでも質問してください。いつでも受けますということも言います。


子どもたちに自力で学べるようにするためには、
先生にいつでもわからないこと、つまずきを尋ねられる安心感。
サポートしてくれる先生のやさしさ。
勉強の道を進むとき、わからなくなったらいつでも立ち寄れるところがあるという安心感が、自力でやってみようという意欲を育てます。
依頼心が育っているから自立心も育つのではないでしょうか。
つまずいたらいつでも先生や仲間のところに立ち寄ればよいという気持ちを持てるようにします。


まずは、学習において、子どもたちをしっかりと甘えさせます。
やがて、少しずつ子どもたちを離していきます。


「自分で考えなさい」と突き放すなら、考え方をていねいに指導しておく必要があります。
「まちがってもいいから話してごらん」というとき、すでに、間違ってはいけないという価値観の上に立っています。
「間違えたのだね、あなたが自分で考えたから間違うことができたのだよ。
 間違えたから正しい答えを求めることができるのです。」
と子どもに話します。


間違うならしっかりと間違える子どもにします。
そして、間違ったところから出発して前に進めるように指導します。

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