教育随想(授業づくり・集団づくり・児童理解)

実践、反省、さらに実践・・・

子供たちを相手にして、悩んだり迷ったりしている先生に読んでいただきたいと思っています。
迷うことが、悩むことが先生の良心であり、最も大切な能力ではないのでしょうか。
 わかったことよりわからないこと、できたことよりできなかったことに 心を向けていく先生は 素敵だと思います。

教育随想 136回 教育目標 遠距離目標 短距離目標 中距離目標

人を育てるという事は、育てようとする方角と方針と地図が指導者になければなりません。
現在の社会には情報があふれています。
何の根拠もない「思いつき」や「思いこみ」から、多くの勉強と思索、経験を重ねた上で誠実にわかっていることだけを述べたものまでさまざまです。


教育の上でも、価値観の多様化といえば聞こえはいいですが、わずかな経験、限られた知識をもとに、ああすればいい、こうすればいいと教えてくれるものが山ほどあります。
しかし、これらの底辺に流れるその人の人生観や哲学を見いだせないことが多いです。
自然とは何か、人間とは何かといった広い視野を欠いているように思えます。


教育は常に背景を伴っています。
自然、人類、社会、家庭、個人という背景の中で、全体との関係の中で教育を考えていくことが大切です。


今はナビ全盛時代ですが、目的地をめざすとき全体を把握できる地図が必要です。
何か目的を遂げようと思うなら、地図のように広い視野を与えてくれるものが重要です。そうでなければ、「でたとこ勝負」になってしまいます。


 教育の目標を定めるとき、3つの目標を設定します。
 一つ目は、遠距離目標です。
 指導要領に書かれているどんな人間をめざしていくのかという目標です。


 二つ目は、短距離目標です。
 教科目標、教材目標です。 
 その教材を通してどんなことを理解させるのか、教えるのかという目標です。本時目標です。


 三つ目は、中距離目標です。
教材目標と指導要領の人間目標をつなげた目標です。
この教材を通して、どのような考え方、感じ方を身につけさせるのか、どのような人間に育てようとしているのかという目標です。


実は、この中距離目標がない授業を目の当たりにすることが多いです。
指導者は、この一時間の授業を通して、どのような子どもたちに育てていこうとしているのか、その方角が明確ではありません。
計算ができたらいい、漢字を覚えたらいい、それは、短距離目標です。


長距離目標は学校目標としてあげられていますが、実際の子どもたちの姿とは大きくかけ離れていることが多いですね。


音楽会があります。
美しく、正しい音をだすことは短距離目標です。
それを通してどのような子どもを育てるのでしょうか。
音をあわせることで心をあわせようとする姿勢
周りの音を耳に入れながら自分の音をあわせていこうとする姿勢。
音楽能力がそれぞれ違っている子どもたちが、一つの曲を表現するために、一つにまとまることの喜びを味わうことをめざすのが中距離目標です。


教材を目の前にして、この教材は、どのような人間、子どもを育てることができるか、あるいは、そのきっかけづくりになるかを考えます。

×

非ログインユーザーとして返信する