教育随想(授業づくり・集団づくり・児童理解)

実践、反省、さらに実践・・・

子供たちを相手にして、悩んだり迷ったりしている先生に読んでいただきたいと思っています。
迷うことが、悩むことが先生の良心であり、最も大切な能力ではないのでしょうか。
 わかったことよりわからないこと、できたことよりできなかったことに 心を向けていく先生は 素敵だと思います。

教育随想1089回 1年国語「たぬきの糸車」指導 第4回

7段落
 わなにかかったたぬき。
どうして、何度もたずねてきたたぬきが罠にかかったのだろうか。
罠はいたずらをする場所に仕掛けるということは、このたぬきは、いつもと違うルートで尋ねてきたことになる。
 罠にかかったたぬきは、おかみさんに助けられる。
「こわごわいってみると」の「こわごわ」という言葉の意味するところと気持を想像してみるとおもしろい。
このとき、おかみさんの気持の中に「もしかして、たぬきが・・・」という思いはなかったのだろうか。


「かわいそうに、罠になんかかかるんじゃないよ。」と、おかみさんのたぬきに対する気持ちの変化がはっきりと表れている。
 叫び声を聞いて、だんなはどうしたのか、気になるところである。


8段落
 「やがて」という言葉から、罠にかかってから、月日が流れ、季節の変化とともに景色も移ろっていくのが想像される。
「やがて」という時間の経過を表す言葉のなかに、にがしてやってからのおかみさんの気持はどうだったのだろうか。
 たぬきは罠にかかってからこなくなったのだろうか。おどろいてこなくなったと考えてもよいかもしれない。そうだとしたら、おかみさんにとっては、さみしくなったことだろう。


3ヶ月あまりの月日がたっていることになる。
冬の間、きこりの仕事がなくなり山をおりる。
その間、あのたぬきはどうしていたのだろう。
冬の間のたぬき、山の冬の様子を十分に想像することで、たぬきの様子も浮かんでくる。


9段落
 春になるときこり夫婦は、再び山にもどってきた。冬の間は、どこに住んでいたのだろうと気にかかる。3か月も小屋を留守にすると、中はどのようになっているのだろう。


10段落
 「とをあけたとき、(読点)」しばらく間がある。
この間は、見渡している間だろう。
様子をうかがっている間だろう。
何か変わったことはないかを確かめている間だろう。
「おかみさんは、」読点で切られている。そこにも間が開けられている。
 「あっと」おどろく。声をあげたのか、あげていないのか。あげたとしたらどんな声か。


11段落
 「はあて、ふしぎな。」おかみさんは、何を不思議だと思ったのか。
 白い糸のたばは、きちんと片づけていたはずなのに、あるわけがない。
「ほこりだらけのはずの糸車」がきれいになっている。
ほこりなんかない。
おまけに、まきかけた糸までかかっている
ありえない、どうなっているのでしょと思わずにはおれないおかみさん。


 そう思いながらも、おかみさんはごはんをたきはじめた。
どうして、不思議なことがあるのに、部屋を回って確かめなかったのかな。
だれかが留守中に侵入したと思わなかったのだろうか。
 おかみさんのおおらかな性格なのだろうか。
 やがて、糸車の音が聞こえてきた。
 これは「ふしぎ」から「びっくり」である。
12段落
 おかみさんは、ちゃいろのしっぽが見えたとき、どうして「そっとのぞくと」だったのか。
声をあげなかったのか。
「たぬきだ、たぬきがいるよ」と叫ばなかったのか。
 恐怖、不安・・・好奇心・・・いろいろ。


 たぬきが糸を紡いでいる様子を見たときのおかみさんの衝撃、言葉にしてみるといろいろとでてくるだろう。
 「うそでしょ」「まさか、あのたぬきが」「なんでよ、すごいよ」「でも、どうして」という心の声が思い浮かんでくる。
 おかみさんは、たぬきをどんな様子で眺めていたのだろうか。


13段落
 「ふいに・・・気がつきました。」おかみさんたちが帰ってきたことに気がつかないで、糸を紡いでいたことになる。
夢中になっていたたぬきが想像できる。
 「ふいに」(不意に)・・思いもよらぬこと。思いがけないこと。
「まさかおかみさんが帰ってくるとは思わないよ。」「自分の行動をのぞいているとは」
 夢中になっていた仕事が一段落したのだろうか。
 「たぬきと糸車」ではなく、ここにきて「たぬきの糸車」になっている。


14段落
 「ぴょこんと そとにとび下りた」
びっくりして逃げたという感じがしない。
おかみさんの眼差し、微笑みを背中に感じて外におりたのではないか。
「ぴょこん」が「びょんぴょこ」になり、去っていく後ろ姿がたぬきの気
持ちを物語っている。
 「うれしくてたまらない」何がうれしいのだろうか。
 糸をつむいでいたのが自分であることをわかってもらえた。
 助けられた恩を返すことができた。
 叱らずに自分のすることを見守ってくれたやさしさがうれしかった。
 破壊活動ではなく、生産的な仕事ができたよろこび。
 去っていくたぬきを見守るおかみさんは、どんな気持ちだったのか。
 最後の挿絵は、いろいろと想像する上で楽しいものである。


本当に心温まる作品であある。
「はあて、ふしぎな」とおもいながら、ごはんをたきはじめるおかみさん。
「びっくりしてふりむくと」なのに「そっとのぞく」おかみさんの気持。
だまってたぬきの様子を見守っているおかみさん。
おかみさんがのぞいていることに気付いたたぬき。
あわててにげていない。
「ぴょこんとそとにとび下りました」の「ぴょこんと」の中にわかるたぬきの気持の余裕。
「ぴょこん」が「ぴょんぴょこ」に変割っていくときのたぬきの心情。
おどりながら帰っていくたぬき。


たぬきは、また、一軒家にやってくるのだろうか。
それとも来ないのか。
たぬきを見送るおかみさんの気持はいかに。

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