教育随想(授業づくり・集団づくり・児童理解)

実践、反省、さらに実践・・・

子供たちを相手にして、悩んだり迷ったりしている先生に読んでいただきたいと思っています。
迷うことが、悩むことが先生の良心であり、最も大切な能力ではないのでしょうか。
 わかったことよりわからないこと、できたことよりできなかったことに 心を向けていく先生は 素敵だと思います。

教育随想 528回 反抗する子 友だちに暴言をはく子

勉強会の先生からの話です。
3年生の男子です。
どんなことにも、先生に反抗する子どもです。
先生の言葉尻を取り上げます。
国語の時間に「一言感想」を全員に言わせている時でした。
その子は「わからない」と言いました。
先生「わからないではなく、何か感じたことはないの?」と問い返しました。
すると、彼は「わからないも一言感想でしょ」とむきになったそうです。
(なかなか見込みのある子ですね)


友だちには暴言を吐きます。
だれからも嫌われていると言います。
休憩時間になると、誰かと、トラブルを起こしています。
(負の行動でしか自分を表現できない)


学校の方針で、その子どもの様子を保護者に伝えたようです。
放課後、保護者が来校しました。
父母ともに来ました。(父母ともに来校したという事実の向こうにあるものは)
先生は、学校での様子を話しました。
すると、保護者は、家では、とてもよい子で、学校での出来事は考えられないとのことでした。
実際の子どもの様子に少しショックを受けたらしいです。
わが子の外と内の姿に驚きを隠せなかったそうです。


この話を聞いて、私は、尋ねました。
保護者は、子どもに対して、厳しいほうですね。
子どもは、学校のことを伝えていないですね。
父親も来校したということは、子どもに対して特別な思いがありますね。


父親は「私の子どものころとそっくりですわ」と言ったそうです。
これは、父親のカモフラージュです。
自分なりに子どもを育てたはずなのに、学校では違っていたという悔しさが、上の父親の言葉に表れています。
本来ならば、どうして、子どもの生活態度が家と外で違うのかを考えるべきでした。
この家の父権が強いようですね。
子どもとの会話が少ないようです。
厳しすぎる親のもとでは、子どもたちは、自分の姿を自由に出せません。
親の求める価値観で生きるしかありません。
いわゆる、「よい子」の誕生です。
しかし、家では我慢しても、自分の内なる気持ちは、どこかで発散しなくてはいけません。


私は、次のようにアドバイスしました。
彼は、あなた(先生)に甘えたい、かまってほしいのです。
それを素直にだせません。
家では、さみしい思いをしているはずです。
彼は、「負の行動」(反抗・暴言・暴力など)で、先生に自分の存在を示しています。
簡単に言うと、「ぼくのすべてを受け入れてほしいという願いを持っています。


ですから、彼との時間を共有してください。
言葉かけでもいいですが、できたら、先生の仕事の一部を手伝わせてください。
今でしたら、植物の世話です。
先生と一緒に出かけて、水やりなどの作業をします。
「頼んでいいかな」という言葉を添えます。
この「・・・いいかな?」という言葉は、相手の主体性を大切にしています。


何日かたってから、先生の報告がありました。
あんなに問題をおこしていた子どもが、教室では穏やかなのです。
そして、彼との作業の時間をつくると、次のような言葉ででるようになりました。
いつでも頼んだいいよ」
「先生、いっしょにしよう」
「いっしょに学習園に行こう」
他にすることないの」
先生が用事で先に行くようにと言う、「先に行って待っているよ」
休憩時間のチャイムが鳴ったので、教室に入るよと言うと
「うん、もっとしていたかったなあ」と不満そうでした。


次の日も同じように誘いました。
それを見て、他の子どもが「わたしも行きたい」と言いました。
今までならば、彼は友だちを寄せ付けようとはしませんでした。
ところが、その時は「いいよ、いっしょにしよう」と嬉しそうでした。


先生は、その子の様子に驚いていました。
私は、言いました。
子どもは、自分をそのまま受け入れほしがっているものです。
しかし、今の家庭において、親の教育方針を強くもっておられる家ほど、子どもたちは、自分の本当の姿を見せられなくなっています。


それを補うのが学校の担任です。
学校教育は、家庭教育を補うところでもあります。
そして、その先生の姿をまわりの子どもたちがじっとが見ています。
やがて、他の子どもたちも先生のそばに近づいてくるはずです。


つまりは、目の前のたった一人のこどもをどうするかが最も大切なのです。
子どもを集団のなかで見ることも大切ですが、まずは、個々の子どもを見据えることです。
学級づくり、集団づくりは、そこから始まります。

×

非ログインユーザーとして返信する