教育随想(授業づくり・集団づくり・児童理解)

実践、反省、さらに実践・・・

子供たちを相手にして、悩んだり迷ったりしている先生に読んでいただきたいと思っています。
迷うことが、悩むことが先生の良心であり、最も大切な能力ではないのでしょうか。
 わかったことよりわからないこと、できたことよりできなかったことに 心を向けていく先生は 素敵だと思います。

教育随想 507回 スポーツ指導 教えて離せ

近くにサッカーの試合ができるコートを3つ保有している公園があります。
土日には、大きな試合があるので散策がてら出かけます。


先日、小学生のチームが集まって大会が行われていました。
私は、スポーツ大会に出かける時に注目するのは、試合ではありません。
試合前の練習の様子に関心があります。


多くのチームは、指導者の号令のもとに練習しています。
試合前なのに、逐一指示を出しています。
子どもたちは、私語が目立ちました。
パスやキックに失敗すると声をだして笑っています。


ところが、一つだけおもしろいチームを見つけました。
子どもたちが自分たちで真剣に、本番に備えて、チームプレーの練習をしています。
私語が全くありません。行動に無駄がありません。黙々とこなしています。


この様子を目にすると、私は、指導者の行動に興味関心がいきます。
子どもたちの隅に立って、じっと子どもたちの活動を見ているだけです。
指示や助言をしていません。
そのようなものは、普段の練習のなかで行われていたのでしょう。
この指導者が、子どもたちの意欲を大切に育てられてきたていうことがよくわかります。
このチームの試合を少しだけ見ることができました。
相手のチームを圧倒していました。
なるほど、そうだなと納得したものでした。


昔、若い頃、バレーボールの指導に興味がありました。
私の師匠である先生が子どもたちを指導する様子を見学させてもらいました。
車で4時間かかるので、頻繁にはいけませんでした。
夏休みが近づいた時、先生が指導されている女子バレーボールの全国大会を目指すことが決まりました。
まず、県大会で優勝しなければなりません。
県大会の日は、日曜日でしたので、車を飛ばして出かけました。
県大会の会場に着いたときでした。
先生のチームもすでに到着していました。


多くのチームが試合前の練習を会場の片隅で行っていました。
ところが、先生のチームだけ、練習をしないでゆったりとくつろいでいました。
選手にどうして練習しないのかを尋ねました。
すると、「私たちは、朝から夕方まで勝ち続けると8試合するんです。だから、体力をためているのです」と話していました。
先生は、「やるべきことは、すでに終わっています。今は、子どもたちに任せるしかない」と言われました。
教えたら離せ」とよく言われました。
私は、先生の教育の一端を垣間見ることができました。
このチームは、8試合を勝ち抜いて全国大会で東京に行きました。
全国大会の優勝はできませんでしたが、私にとっては印象的な経験でした。


あとで、先生から伺った話です。
「このチームの子どもたちは、学校のなかで体育が得意な子ばかりではない。そのような子どもたちを育てることが指導です。できる子どもを集めて、試合に臨んだのではないです。教育とはそういうものです。」
このことが私の生涯に大きく影響を与えました。

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