教育随想(授業づくり・集団づくり・児童理解)

実践、反省、さらに実践・・・

子供たちを相手にして、悩んだり迷ったりしている先生に読んでいただきたいと思っています。
迷うことが、悩むことが先生の良心であり、最も大切な能力ではないのでしょうか。
 わかったことよりわからないこと、できたことよりできなかったことに 心を向けていく先生は 素敵だと思います。

教育随想 387回 ごんぎつね 最後の6場面 一つの指導

「ごんぎつね」の最終場面です。
ここは、子どもたちが今まで読んできたことの評価の場面です。
最後の5行を中心に子どもたちと読み深めます。


・・・・ごんは、ぐったりと目をつぶったまま、うなずきました。
    兵十は、火縄銃をばたりと取り落としました
    青いけむりが、つつ口から細く出ていました。・・・・・
                      (教科書から抜粋)


ごんは兵十の鉄砲で殺されることにむなります。
血なまぐさい場面でもあります。
そうしないために、「青いけむりが、まだつつ口から細くでていました」
悲しく美しいイメージが最後を飾っています。
お互いの言葉が通じ合わない、その中で引き起こされた悲劇です。
しかし、最後には、くりを運んだことが兵十にわかってくれたという一つの救いでもあります。


「青いけむり」は、悲しみであると同時に救いの意味を表す美のように思えます。
もし、ごんと兵十が通じ合える言葉をもっていたならどうなったのでしょうか。
新美南吉は、どうしてごんを死なせてしまったのでしょうか。
なぜ、最後は分かり合えるという設定にしなかったのでしょうか。
実際の授業の場面で次のような働きかけをしました。


働きかけ(1)
「青いけむりは、いったい何をあらわしているのかな。」
子どもたちの声として
「ごんの命がはかなく消えていくこと」
「ごんのたましいが天にのぼっていくこと」
「ごんのかわいそうな心を表している」


 子どもたちの考えに対して
働きかけ(2)
「兵十の気持ちを表していないかな?」


子どもの反応
「青いけむりは、兵十のゴンに対するにくしみが消えていく様子を表している」
「うつまで気づかなかった兵十の気持ちが表れている」
「ごんを殺した自分の行動の情けなさを表している」
「これからの自分の生き方を表している」
「これからの一生を後悔していく兵十の気持ちをあわしている」
ごんにとって悲劇であると同時に、兵十にとっても悲劇であるという考えがだされます。


働きかけ(3)
この「青いけむりが・・・」がなかったらどうだろうか?」


子どもの反応
「作者は読者に対して悲しい思いを強めたいと思っている」
「ごんの悲しみだけでなく兵十の悲しみも伝えようとしている。」
「兵十とごんは、やっぱり仲良くなれなかった」
「ごんが死んだあと、兵十は、この問題をどのように考えるだろうか」
「やがて、兵十は忘れてしまうだろう」
「だったら、ごんはかわいそうだ」
「文章はとても明るく楽しいところがたくさんあるのに、最後になって、とても暗い気持ちにさせてしまう、不思議な物語だ」


このあと、南吉の出身地愛知県の半田市を尋ねました。
結核を患い29歳の若さで亡くなりました。
18歳の小学校の代用教員の時に「ごんぎつね」を執筆しました。
彼の生涯が写真とともに展示されていました。
私は、教材研究は、自分自身を耕すものだと考えています。

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