教育随想(授業づくり・集団づくり・児童理解)

実践、反省、さらに実践・・・

子供たちを相手にして、悩んだり迷ったりしている先生に読んでいただきたいと思っています。
迷うことが、悩むことが先生の良心であり、最も大切な能力ではないのでしょうか。
 わかったことよりわからないこと、できたことよりできなかったことに 心を向けていく先生は 素敵だと思います。

教育随想384回 子どもたちを学習に誘い込む 三つの世界

現場での授業がますます形骸化されてきているように思います。
授業のIT化と称して、電子黒板をどのように活用するかを研修のテーマにされている学校があります。
教育機器は、歴史的に見ても、現場の先生が求めて導入されたものは少ないです。
いろいろな教育機器が導入されましたが、その時は少し盛り上がるのですが、使い勝手が悪いということで、教具室に埋もれることになっていました。


教室の黒板の三分の一が電子黒板になっている学校があります。
その学校の先生が、充分に活用しにくいということで悩んでおられました。
その先生は、研修の研究授業を任されました。
電子黒板を使っての算数の授業だそうです。
初めに教育機器ありきです。


算数の学習をこのようにしたいというビジョンがあって、教育機器が導入されているわけではありません。
研修グループでは、どの単元をしたら機器を活用できるかという話し合いをしているそうです。
そこには、子どもの学びが消えています。


さて、授業は、教材を媒介として、子どもと先生の葛藤です。
子どもたちの考えを広げたり深めたりします。
そこには、気づきと疑問の世界があります。


子どもたちを学習に誘い込む三つの世界があります。
「とまどいの世界」「冒険の世界」「ひろげる世界」です。
それぞれの世界について簡単にお話します。


とまどいの世界
①問題をとらえる段階です。
 今日は、何をどこまで勉強するのか。
 どこまで学習したらよしとするのか。
 何がわかり何ができたらよいのか。
 それぞれ語ともたちが戸惑う時です。
この段階では、全員が問題を明確に把握しておく必要があります。


②見通しをもつ
 どのようにして課題を達成するのか。
 学習の手順、学び方を全員の子どもたちが理解する。
 先生だけが手順を理解しているのではありません。
 子どもが学習の主人公として理解することが大切です。


③焦点化
 これは、課題を作るうえで、子どもたちの気づきや疑問がでます。
 それらすべてを扱うわけにはいきません。
 その中から中心になる事柄を選びだし、問題を焦点化していきます。
 ここにとまどいがあります。
 迷いがあります。


この戸惑いの段階を先生だけで先走ると、子どもたちは先生指導列車に乗せられていくだけの学習になります。


冒険の世界
子どもたちが追究していくなかで、どれだけ自由に考えることが許されているかが重要です。
正解、不正解という判断を突き破る世界です。
先生の狭い知見の枠のなかで、子どもたちの考えや感じ方を切り捨てないことです。
先生が意図している子どもたちの発言で学習が進行しないようにします。


ひろげる世界
実は、この世界が先生にとって最も大切なのです。
一時間の授業が終了したとき、どれだけの子どもたちが先生の元に来ますか。
「先生、この場合はどうなるの」「こんな考え方もあるよ」など、学習したことが終わらずに広がっていく世界です。
これを転移段階と言います。
実は、私は、この延長上に「総合的な学習」があると考えてきた一人です。
総合的な学習は、教科内容をさらに深めたい、広げたいという子どもたちの場なのです。


授業、学習は一時間で完結しません。
授業は、子どもたちにとっては、学びの始まりにすぎません。
先生の授業のあとに、先生に近づいて質問できる子どもたちを育ててください。

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