教育随想 270回 通し練習から舞台練習へ
通し練習ができるまで次の段階の指導はしません。せりふとせりふをつなげることに力をいれます。それと、役者としての自己表現ができることを目標として活動させます。
劇の自己表現をさらにはっきりさせるための指導として、次のようなことを実施します。
①ペアやグループで、会話のやりとりをする場面だけの集中練習
ここからが先生の助言と指導が強く入ります。
登場人物がだれに何を伝えたいのか。
伝える者と伝えられる者(聞く)の心の動きを考えさせます。
驚き、不安、不満、悲しみ、落胆、失望、喜びなどを追求します。
ここは、国語の読解学習と同じです。
登場人物の心のうちに入れるようにします。
心情理解、特に、登場人物に共感できるかどうかがポイントになります。
対話におけるやりとり、テンポと間合いを考えます。
やりとりにおいては、人物同士がどのような気持ちをやりとりしているのか。
言葉を発する者とそれを受け止める者の気持を考えさせます。
空の盛り上がりは、テンポを速くします。
登場人物の気持が外に向かっています。
間合いをとるときは、登場人物の気持が内側に向いていくときです。
それは、ためらい、疑問等です。
常に、考えながら練習します。
対話のおもしろさや切迫感などをだせるようにします。
そのやりとりをほかの子供たちが見学しています。
そして、子ども同士でアドバイスをするようにします。
一つの場面を子供たち全員が立ち会って工夫しあうことで、自分たちの演技にも影響を及ぼしていきます。場面ごとに区切って練習しているときに、出番のない子どもたちは観客席に座って見守っています。そして、気づいたことをアドバイスします。指導の目的は、子どもたちが先生から離れていくためです。
このことが、やがて、子どもたちだけの劇になっていきます。
気付いたら半分ほど脚本とは違ってきたということになります。
②場面ごとにみんなの前で演技をしてアドバイスを受けることを継続します。
そこで、次の段階として、セリフなしに動作だけで伝えることができているかどうかを点検します。
口ばくで身振り手振りで役者は自分の想いを語ります。
音声を消すことで、動作の問題点が浮かび上がってきます。
動作は大きいけれど、どんな意味をあらわしているかよくわからない。
もっと動作をわかるようにしないと見ている人はわからない。
ということを助言しあいます。
動作は言葉です。気持ちを伝える手段です。
言葉を生かすためのものです。
③大道具と小道具の制作
通し練習ができるようになったところで、少し休憩します。
道具と背景を制作します。
劇活動が始まると、すぐに、小道具をつくることがありますが、道具や服装は最後です。最初に道具に着手すると、子どもたちはそれにとらわれすぎてしまいます。
大切な表現主体は、子ども自身であることを意識させます。
背景は、これがなくてはならないもの、季節や場所の設定が必要なもの、あるいはクライマックス場面を効果的に表現するためになくてはならないものを優先的に制作します。
小道具については、それを必要とする配役グルーブで制作します。
衣装については、各自またはグループでイメージをだしあって制作します。
繰り返しますが、よく劇練習を始めるとき、先に衣装を制作することがあるようですが、子どもたちがその役にある程度入れ込むようになってから制作したほうが、より意欲的、効果的なものを創り出します。
④照明と音楽については先生の仕事
音楽は、子どもたちの申し出があれば任せます。ピアニカやピアノなどで音楽効果をだすこともあります。
照明は市販の電球と理科室のスタンドを組み合わせて用意します。
特に、体育館の場合は、全体照明とスポットライトは備え付けがありましたので活用しました。
ただ、顔を下から照らすスポットライトは効果的に使えるので用意します。全体が真っ暗で下からのスポットだけを使います。
それらができたら、衣装をつけて道具を使って、舞台にあがって練習、舞台稽古の始まりです。
前半と後半に劇を分けて、演じる人と見る人に分かれて練習を始めます。
音楽も照明も入れての練習です。
その結果、どうしても物足りないところがでてきます。
実は、劇活動の練習は、ここからが本当の始まりなのです。
それは、練習ごとに表現力や内容が変化するからです。
子どもたちが先生から離れて自分たちの劇を作り出すからです。
それは、脚本の修正であったり、アドリブであったりします。
その5に続