教育随想(授業づくり・集団づくり・児童理解)

実践、反省、さらに実践・・・

子供たちを相手にして、悩んだり迷ったりしている先生に読んでいただきたいと思っています。
迷うことが、悩むことが先生の良心であり、最も大切な能力ではないのでしょうか。
 わかったことよりわからないこと、できたことよりできなかったことに 心を向けていく先生は 素敵だと思います。

教育随想 185回 教材研究 学問的な追究が最初にある

子どもたちに教材を使って指導するわけですが、その学問的な背景を知っておくことは大切です。
中学、高校ならともかく、小学校で教える内容は簡単なものだから、別に、学問的な背景をもとめなくてもいいという人もいます。
しかし、私は、小学校の学習内容ほど、その教科に対する学問的な造詣が必要だと考えてきました。
小学校1年生であっても、学習内容が広く学問の世界につながっています。


1年生の定番ですが、あさがおの栽培があります。
種をまいて、水をやって、発芽したら観察していく学習です。
しかし、それは、あさがおだけの勉強ではありません。
子どもたちに、植物とは、命とは何かを感じさせる学習です。
あさがおが土の中から命の芽を土を押しのけて地上に姿を現します。
感動の一瞬です。幼芽を傷つけないようにまっすぐに土の中から顔をだしません。背中を丸めて、背中で土を押しのけて発芽します。


1年生の子どもたちに「このあさがおの種は生きていますか、死んでいますか」と問いかけるとどうでしょうか。子どもたちは迷います。ある子は眠っていると言います。
そして、種をまくとき、子どもたちに「今からあさがおの赤ちゃんを渡しますね。」と言ってから子どもたちの手に一人ずつ種を渡します。子どもたちは、とても大事そうにして、その種を受け取ります。
そして、発芽を祈って土をかけます。


「あさがおの芽が土の中から顔をだしたらすぐに先生に知らせてください。
だれが一番に知らせることができるかな」と話します。
子どもたちは、朝すぐに、休憩時にもあさがおの鉢を観察をしています。
私は、発芽の瞬間の植物の知恵に気づかせたいのです。
さらに、植物は、根を張らせないと茎や葉っぱを成長させられません。
だから、土の中の見えない根っこの姿を想像させながら、水やりをさせます。
水をやりすぎると、根っこが水でおぼれてしまうんだよと言って、水やりの大切さにも関心を持たせます。


「葉っぱは太陽に向かってひろがるよ」といって、葉っぱの重なりにも注意を向けさせます。それぞれの葉っぱが日陰にならないようになっている仕組みに気づきます。


やがて、花を咲かせます。
どうして、「花を咲かせるのですか」と尋ねます。
子どもたは、「きれいになりたいから」「虫をよびたいから」「たねをつくりたいから」など、いろいろと話します。
花が咲き終わると種ができます。その時に、はじめて、「花を咲かせたのは、この種を作るためなんだね。この種をまくと、また、新しい命が生まれるということだね。」
命の終わりを学びます。


植物学の勉強は、草花を教えるのに役立ちました。
植物の命のあゆみを学問的に学びます。
植物が自分のおかれた環境に応じて、命をつなぐために、いろいろと工夫して生きていること、日光の奪い合い競争をしてたくましく成長していく木々、野草などを見ると、感慨深いものがあります。



6年生の歴史学習、特に、縄文、弥生時代は、今では、いろいろなことが遺跡から実証されています。
 縄文の豊かさ、エネルギーあふれる生活の様子がわかっています。各地の古代遺跡を実際にみることが好きでした。
 青森の三内丸山遺跡から宮崎県の西都原遺跡まで多くの遺跡に行ってみました。実際に行くと、ネットや資料でイメージしているものとは違っていました。特に、そこの学芸員の方のお話を聞くと、古代のイメージが大きく変わってしまいます。
 宮崎県にある西都原遺跡の歴史博物館の展示は、私に古代を学ぶ意味を明確に教えてくれました。それは、古代哲学であり、考古学哲学でした。


4年生の社会科学習、郷土学習においては、難しいものがあります。
何十年前の画期的な試みが教科書に記述されていますが、現代においては、多くの問題をかかえてしまっていることがあります。教科書の記述とは異なっています。時代の流れによって変化しています。
教科書が発行された当時の状況ではなくなっていることも多いです。


そうなってくると、実際に現地を歩いてみることです。
資料館等で調べるほかありません。
しかし、これが楽しいのです。
教材研究というよりも、自分の好奇心が刺激されて、本当のことを知りたくなるものです。
小学校の教科書には、郷土の良い面が大きく書かれていますが、問題点については記述があまりにも簡単、あるいは、省略されています。


理科は科学史、その概念が作られてきた歴史過程を大切にします。
やはり、中学、高校ぐらいの理科の参考書、教科書を用意します。
自分の勉強のしなおしですね。
私は、理科の予備実験を必ずしました。
先生にとって忙しくて、予備実験まではできないということもあります。
実験を自分ですると実験技術や安全上の問題にも気づくことができます。
何よりも教科書どおりにならないことが面白いですね。

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