教育随想(授業づくり・集団づくり・児童理解)

実践、反省、さらに実践・・・

子供たちを相手にして、悩んだり迷ったりしている先生に読んでいただきたいと思っています。
迷うことが、悩むことが先生の良心であり、最も大切な能力ではないのでしょうか。
 わかったことよりわからないこと、できたことよりできなかったことに 心を向けていく先生は 素敵だと思います。

教育随想 152回 ねらいと見通し力の育成(わかる・わからいのものさし)

学級経営案の実践例です。
私は、先生の仕事は、実践の中の事実から実践方法を見出して検証していくものだという姿勢で歩んできました。
したがって、理論的でない部分も多々あります。
参考書があって子どもの指導があるのではなく、あくまでも目の前の子どもたちの姿から実践方法を考え出したいと思っていました。
参考書は、子どもたちの事実をつなげたり、洞察したりするときに参考にします。参考書から出発することは少なかったです。


5年生の子どもたちは、自分の思いを主張する反面、先生がなんとかしてくれるものだという甘えがありました。
子どもたちの問題点は、授業(学習指導)において修正、矯正していきます。実際の学習場面を通して、子どもたちに考えさせるようにします。


学習する上で大切なことは、「何がわかる」「何ができる」というねらいを明確にすることから始めます。そして、そこに至るまでに「どのように学習すればいいのか」年間を通して深めていくことになります。


車を運転していると交通渋滞に出合います。
ノロノロ運転は疲れたりいらいらしたりすることがあります。
しかし、どこから、どのような原因で渋滞しているのか、距離はどのくらいなのかがわかると妙に落ち着くものです。


子どもたちの学習も同じです。
先生に導かれて学んでいて、その行先がわからなかったり、学びのルートがあいまいであったりすると、意欲の減退につながります。
先生のお尻について歩くだけの子どもになります


「今日の勉強は、どんなことがわかればいいのですか」
「今日の勉強は、どんなことができるようになったらいいのですか」
教科書を読んで考えさせます。もちろん、体育の場合もこの形を使います。
マット運動であれば、自分は「どこまでできるようにするのか」「そのために、どのような練習をしたいのか」などを明らかにします。
もちろん、独りで難しいこともありますので、小集団を活用します。
終着点とそこに至る道筋を子どもたちと一緒になって考えます。


計算学習において、「筆算の仕方がわかる」までなのか、「筆算の計算ができる」か、さらに「まちがいなく筆算ができる」さらには、「はやくまちがえずにできる」というねらいなのかを意識させます。
後のねらいになるほど、練習問題を多くこなすことになっていきます。
ねらいはできるだけ具体的にあげるようにします。


この時に大切なことは、子どもたちがどの状態で「わかったよ」「できたよ」と宣言するかです。自分の学習の終点をどこにするか、具体的に見通せるようにします。
これは指導者の責任ですが、低学年の時から「わかったかな」「わかったでしょ」「わからないのかな」など、わかったとわからないことの二者択一の反応を求めてきたことにより、だいたいわかっても「わかった」の中に入れてしまいます。わからないことは恥ずかしいこと、だめなことだというイメージを持ち続けている子どもが多いです。


そこで「わかる」「わからない」の間に段階的に基準を入れます。
わかった・・だいたいわかる・・なんとなくわかる・・あまりわからない・・わからない のようなものさしを作ります。基準の言葉は、子どもたちの言葉に置き換えます。つくったものを画用紙に書いて前面に掲示しておき、授業のなかで活用します。
場合によっては、基準の物差しの真ん中に「迷っている」という言葉を入れるのもいいです。そうすることで「どんなことが迷っているか、まよっていないのか」を考えさせます。
要するに、自分のわかり方、内面を見つめるものさしをつくります。


めあてが具体的にわかれば、そこに至る学びのルート、道筋を考えさせます。もちろん、はじめから、子どもたちだけでできないので、先生と一緒に考えるようにします。
やがて、2学期には少しずつ子どもたちの手に委ねます。
それが主体的学習の始まりです。授業の半分は子どもたちに任せるようにします。


道筋は、最初は「独り」「ペア」「班」「全員」の形態を選択します。
独りで考えにくい場合は、「全員学習」から始めてから「独り学習」に入ります。
学習内容によって、途中子どもたちのわかり方によって、「班学習」を入れます。
ノート思考、発表、話し合いの形を意識させます。
これについても回を別にして詳しくお話します。


校外学習の場合も「行先」「その目的」を明らかにして、何がわかりたいか、調べたいかを明確にして見学に臨めるようにします。
見学先に行くまでの移動ルート、バスか電車か、貸し切りか公共交通機関
かによって、どのような注意事項があるかを子どもたちで事前に考えさせます。その時も一律に考えるのではなく、決まりに幅を持たせます。
必ず守らなければならないこと、守りにくいことなどを事前に子供たちに考えさせておくとおもしろいです。子どもたちにも責任を持たせることで自分たちの行動に自覚が生まれます。


運動会、音楽会、自然学校などを計画するとき、「ねらい」と「見通し」を明確に把握させることで、子どもたちの動きが変わります。


次は「問題解決としてのコミュニケーション能力の育成」(話す・聞く)の実践になりますが、数回にわたって書きたいので後に回します。
次回は、「自治への目覚めとしての朝の会、終わりの会」の実践についてお話します。

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