教育随想(授業づくり・集団づくり・児童理解)

実践、反省、さらに実践・・・

子供たちを相手にして、悩んだり迷ったりしている先生に読んでいただきたいと思っています。
迷うことが、悩むことが先生の良心であり、最も大切な能力ではないのでしょうか。
 わかったことよりわからないこと、できたことよりできなかったことに 心を向けていく先生は 素敵だと思います。

教育随想 1029回 国語「やまなし」独り言 その4

水面からの侵入者「かわせみ」が魚を捕獲しました。
「ぶるぶるふるえているじゃないか」とお父さんの声。
「こわいよ、お父さん」と兄の声。
「だいじょうぶだ。心配するな。そら、かばの花が流れてきたよ。」


殺生があったあとに、「白いかばの花びらが、天井をたくさんすべってきました」
一つの命が消えたあとの「しろいかばの花」
対照的であり、象徴的でもあります。
「すべっていきました」もとの水面にもどっています。
静かで、何事もなかったかようにすべっています。


そのあと、光のあみの上を花びらのかげは静かにすべっています。
この作品の中に、「かげ」がでてきます。
白いはなびらとその黒いかげです。
実体と虚像とでもいうのでしょうか。


ここまでが五月の様子です。
食う、食われるの弱肉強食の世界です。
平和に見える美しい世界ですが、そこでは、すべての命がはかなく揺れ動いています。
色の世界、黒、白、青、黄金を使って描かれています。
光とかげが情景を立体的にしています。
仏教観を背景として、無常の世界が描かれています。


12月の谷川の底。
すべてのものが枯れている凋落の時です。
その谷川にやまなしが落ちてきます。
「トブン」といいにおい、かおりをもたらして天井からずうっとしずんできます。
「ずうっと」は「ずっと」を強めた言い方です。
沈んでからの距離と時間があります。
やまなしが落ちてしずんでくる状況が長い間続いています。
それが「ずうっと」という言葉に表されています。
五月の侵入者とは明らかに違います。



二つの課題をつくることができます。
題1「すっかり変わりました。どんなところが変わったのですか」
課題2 やまなしをかにはは、どのように受け取ったのか。

    そのとき、トブン
     かわせみだ 
       やまなしだ
         やっぱりやまなしだ
           おいしそうだね
              さあ、もう帰ってねよう
   これらの言葉にこめられたかにたちの思いをたどっていきます。

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