教育随想 1116回 新学期の授業 力を抜いて 手を抜いて
授業は子供に知識を伝えるもの。
授業は文化遺産を伝えるもの。
今までの文化を子供たちに伝えるもの。
そのための年間学習指導計画。
授業はもう一つの側面がある。
学ぶ意欲、学習意欲を育てる。
子供に学びに対するエンジンを取り付ける。
学ぶ意欲は、教材の面白さ、わかりやすさと難しさ、自分もできるという有能感を前提とする。
さらに、大切なことは、学ぶ環境、雰囲気。
その中の一つに授業者との心的距離。
新学期当初の先生に対する不安。
自分が間違ったら先生どうするかな。
わからないとき、責められはしないかな。
私にわかるように教えてくれるかな。
指名されて発言できなかったら先生はどんな表情でわたしを見るかな。
そのようなことを考えると、初期の授業は、子供たち全員と関わります。
挙手発言に任せることなく、先生が一人ひとりをていねいに指名して発言を求めます。
子供によっては、質問、即指名ではなく、指名ー無駄話ー質問という形にします。
さらに、指名して答えさせるための質問は、子供によって難易度を調整します。
このような細かいことは必要ないと思われるかもしれませんが、初期のていねいさは、一年間の学習指導のエネルギーになります。
「A君、今日は、いつもに比べて元気だね。何かいいことがあったのかな。・・・・ところで、質問するよ。」と前置きをしてから話します。
子供によって、この対応の言葉は異なります。
最初から挙手発言に頼ると、発言できない子は最初から諦めるようになります。
「先生は、全員の声を聞きたいので、全員指名にします。」
全員指名が終わったら、次のように言います。
「手をあげてはいけません。あなたの表情だけで、発言したいという気持を伝えてください。
その気持が先生に伝わったら指名します。
このようにして、指名だけの授業を始める。
一週間かけて実施する。
「今日は何ページからですか」
「今日は何曜日だったかな」
というような質問も入れます。
教材は先生と子供が仲良くなるためのものです。
だから、教材のすべてを教え込もうとしないことです。
手を抜くのです。
核になる内容を中心にして周辺の内容は手を抜きます。
学習意欲を育てることが狙いだからです。
教材を教えるが教材で分かり合う。
最初は欲張らないで力を抜いて始めましょう。