教育随想(授業づくり・集団づくり・児童理解)

実践、反省、さらに実践・・・

子供たちを相手にして、悩んだり迷ったりしている先生に読んでいただきたいと思っています。
迷うことが、悩むことが先生の良心であり、最も大切な能力ではないのでしょうか。
 わかったことよりわからないこと、できたことよりできなかったことに 心を向けていく先生は 素敵だと思います。

教育随想 105 回  「はい」という返事は 学級の高まりのバロメーター

学級づくり3か月目に入りました。
4月の時と比べて何かが違ってきたのではと思うことはないですか。はっきりと形になって表れるものもあれば、なんとなくそんな感じがするなあというものまでいろいろあります。


変化の一つとして返事の「はい」です。
返事の「はい」は、拝むという漢字が語原だそうです。
「拝み受け取る」のが本来の意味です。 
そして「拝」は、「丁寧に敬礼する」「有り難く受け取る」という相手を敬う気持ち、感謝する気持ちが表れています。


教室で使われる場面
「これからは気をつけてくださいね」
「はい(わかりました)」と了解、理解を相手に表明しています。
そこには、素直さ、言ってくれてありがとうという感謝の気持ちを表しています。


「○○くん」と名前を呼ばれたら「はい」という返事。
呼ばれた人間は、「私は○○だ」という自分の存在をはっきりとさせます。
そして、名前を呼ばれたこと、呼んでもらったことに対する感謝の意もあります。
「そこの あなた」と言われると、返事する意欲がなくなります。
きちんと名前を呼ばれることのうれしさがあります。


さて、4月の子どもたちの返事は小さいです。
まわりとの緊張感から小さくなることがあります。
自分に自信が持てなくて控えめになることもうあります。
返事の大きさは、その時の子どもたちの気持ち、先生や友達に対する気持ちをダイレクトに表しています。


返事の声が小さいので「もっと大きな返事をしなさい」という指示は無意味ですね。返事を通して、その時々の子どもたちの気持ちを察知していくことが大切です。


「○○くん」と名前を呼んだとき、少し元気がない返事が返ってくるとき、「どうしたのかな、からだの調子が悪いのかな」というような言葉を添えます。
子どもの心をまず気遣うことが先です。


わからないことがあると、納得していないことがあると、その返事も小さくなります。そんなときに「わかったの?わからないの?」返事をはっきりしなさい」では、子どもたちは萎縮してしまいます。
そこで、学習場面では、「わからないこと」が自慢になるぐらいのほうがいいですね。
「わからないんだね」「はい、先生、わかりません」と、にこっとして言えるようにしたいものです。


自分の気持ちを表す返事とは別に、相手とのコミュニケーションとしての返事があります。
「これを頼んでもいいかな」「がんばってごらん」と言葉かけをするとき、元気な明るい返事で返すと相手も心地よい気持ちになるということに気づかせます。


そして、「返事は短く、はっきりと」するように楽しく指導します。
「はい」と返事した子どもに対して「10cmの返事かな。1cmの返事にしてごらん」と子どもたちとの間で遊びます。
これは、返事の仕方を問題にする時です。
「は」と「い」の文字を黒板に書いて間を少しずつつめていくと子どもたちの返事は変わります。


さて、返事が変わる根底、最も大切なことは、先生と子ども、子ども同士の信頼関係の親密さにあります。
お互いに信頼を深めあっていくと、子どもの返事は変わります。


先生の返事が教室で一番元気で明るいことです。
子どもたちに声をかけられたら、間をおかずに「はい」と言えるようにします。
教室、廊下、運動場どこでも返事する先生であることで子どもたちは、返事されることの心地よさを感じ取るようになります。
そして、子どもも自らすてきな返事をしようと意欲的になります。
ここでも、やはり、先生のヘッドシップです。


6月、子どもたちに活気と親密さ、信頼関係ができ始めると、どこかお互いの返事がちがってくるでしょう。
返事の大きさや明るさは学級の高まりを表すバロメーターです。
その中で、先生が一番元気な「はい」の実践者であることです。

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