教育随想 281回 補足 「授業開始 5分間で離陸」
前回でお話したことについて、私の不手際でうまく伝えられなかったことがありますので補足します。
前回の授業開始の5分間の動きについては、1か月以上の時間をかけているということです。そうでないと、発達障害の子供たちにとっては、最初からついていけないことになります。
子供たちの思考、気づきをしっかりと育てることを目標としてお話しました。そこにいたるためには、本当は、細かいステップをふんでいることをお話します。
どのような教育技術も指示してできるものではありません。
風邪で病院に行っても、医者(患者)は治癒までに経過観察をします。
教育においても、子供たちに指示をするとき、常に、指導する(連続な観察をふまえて)ことを意識します。
たとえば、「姿勢を正しくしなさい」と指示しても、それでよくなることはありません。これは指導ではないからです。
「正しい姿勢」になるまで、その過程において小さな指示をだしながら「導いていく」のが指導であることは誰もが知っていることですね。
ところが、職員室で聞かれる言葉で、掃除の時間にさぼっていてほとんど美しくなっていないときに、担任が教頭から注意されると「いつもさぼらないようにと指導しているのですが・・・」と言い分けなさっていることがあります。
導いていないから指導されたとはいえません。
指示と指導はしっかりと区別します。
さて、授業開始5分間の指導についてお話します。
4月の一か月が大切な指期間です。
最初の授業のことをお話します。
たとえば、算数の授業を取り上げます。
先生は、黙って子どもたちが机上に用意しているものを観察します。
筆記用具の有無、そのだし方、教科書やノートの有無、乱雑にだしている子どもがいます。学びの姿勢を表しています。
教科書を開いている子、閉じている子、ノートをすぐに使えるようにしている子などを観察します。それらは、前学年での子どもたちの学びの姿勢です。時には、これから始まる新学年の勉強に対する学びの意欲を示していることもあります。
子どもたちは本時のめあてを把握していません。
先生がめあてを言ってくれて勉強が始まると思っている子どもが多いです。
校外学習の行列で先頭の先生のあとについていくだけです。
教科書やノートをだしていない子がいる時
「今日の勉強の準備ができている人は手を挙げてごらん」
指名して「あなたは、どんな準備をしているのかな」と尋ねます。
「筆箱をだしています」「教科書とノートをだしています」
先生「それはすごいねえ」と認めると、だしていない子どもはこそっと机の上に揃えます。
先生「準備をしている人で、他にしていることはありますか」
教科書やノートを開いている子どもが発言します。
先生「それはすごいねえ、ところでどこを開いているのかな」と質問。
本時のところを開いていることを伝えると、
先生は「なるほど、今日の勉強はどこから始めるのかわかっているんだね。みんなも開いてごらん。隣同士で確かめ合おう」
なるほど、これからは、勉強の準備はここまでできそうだね。
以後は、子どもたちが気付けるようにもっていきます。
「準備できましたか?」と尋ねるようにします。
次に、「筆箱は用意できているけど、何を使う予定ですか」と、今日の勉強に合わせた用具、鉛筆(シャーペン)赤鉛筆、定規、消しゴムなどがありますが、今日の勉強に関係ないと思うものは出さないようにします。
私の場合は、必要な用具を出させて、筆箱は机の中にしまわせます。
それは、狭い机がさらに狭くなるからです。
したがって、机の上には、本時に関係のあるものだけを出させる習慣を身につけさせます。そうすることで、自分の筆記用具の使い方を意識できるようになります。
これらのことが定着するには1週間かかります。
1週間、続けて意識させるようにします。(指示から指導へ)
次の週には、教科書を開いて待てるようになると、
先生「みんな教科書を開くようになったね。ところで、今日は、どんなことを勉強するのかな。めあては何かな。ペアで相談しなさい。」と伝えて考えさせます。
めあてがいろいろと考えてきますが、迷っている子どももいます。
そこで、めあてが言えた子どもに尋ねます。
先生「あなたは、そのめあてをどこを見て考えたのかな」
子ども「題名です」「見出しです」
先生「なるほど、今日は、割り算の勉強だね。見出しにかいてあるからわかるんだ。では、割り算のどんなことを勉強するのかな」
というように、細かくたずねていきます。
子どもたちが気づけることは、先生は教えません。
気づかせることは、子どもたちに頭を使わせることです。
ただ、子どもたちが気づくことが無理なことは、すぐに教えます。
「教えること」「気づかせること」「考えさせること」の三つの活動が指導案にきちんと区別して書かれていることが大切です。
したがって、5分間で離陸していくには、さらなる細かいステップが必要だということです。
大胆にステップアップするとき、その前提として、いつでも子どもたちの実態に応じて、スモールステップを用意しておくことが重