教育随想 22回 急がない ゆるりと始める 新学期
新年度が始まると、学級生活の準備という名目で、大掃除、学級のめあて、学級のルール、係活動分担、当番活動の割り当てなど、新学期の三日間は大忙しですね。
先生としては、最初にきちっとした型作りをしたいものです。容器をつくってから液体を流し込みます。液体は漏れることはありません。しかし、液体は、その枠組みの中で形が規制されています。形を変えることはありません。
子どもたちと学級の枠、ルールも同じですね。
どうしても先に組織しなければならないのは、実務的な仕事のみです。
清掃当番、学校生活の中の学級生活ですから、当然、組織しなければなりません。当番の班をどのように決めるかは迷うところですが、とりあえず、暫定的に決めておきます。
座席、班、清掃は、4月は暫定的に決めておき、正式に決定するのは、5月連休のあとにします。子どもたちにもそのように伝えてます。
その理由は、一か月、子どもをじっくりと観察したうえで決定します。
4月は、学級づくりの準備期間で、正式にスタートするの5月のゴールデンウィークが終わってからにします。
班や係については、回を追って詳しくお話しします。
今日は、学級のめあてについて考えてみます。
学級のめあて、なぜ、新学期早々決定するのでしょうか。企業ならわかります。企業の目標や気風に、働く人が合わせていかなければならないからです。営利を目的とした集団であれば仕方がありません。
しかし、学級生活は、営利目的ではありません
個々の子どもたちの成長がねらいです。そのための集団生活です。
子どもの様子がわからないのに、すでに学級目標が掲示されている教室があります。子どもたちの様子がわからないのに、どのような実態、どのような子どもたちの願いをもとにして決定されたのでしょうか。
ただ、学校目標や学年目標は、決定されていますので最初に掲示する必要があります。
よく見られる風景。
先生は、学級のめあてを子どもたちに提示します。「みんな なかよし」「明るく元気な子」「がんばる子」「支える子」他いろいろあります。
このめあては、何を根拠にして決めたのでしょうか。
子どもたちと出会ってすぐに決められるめあてとは、どのようなものでしょうか。
めあてを決めることで、先生だけが安心します。
子どもたちにとっては、どこ吹く風の出来事なのです。
黒板の前面に学級のめあてが掲示されていると、なんとなくかっこいいというか、さまになっているような感じがしますね。やがて、学年の終わりには、めあての掲示の画用紙が日焼けして色あせてみえます。
さらに考えなければならないのは、目標のようなスローガンは、それを掲げてしまった時点で、そのめあてについての追究をやめてしまいます。
学校目標もしかりです。
一年間通して成果と問題点が協議されることは少ないです。
たとえば、「みんななかよく」
本当にできるもかという問いを先生がだして考える必要があります。
なかよくとはどういう姿をいうのでしょうか。
「ささえあう学級」支え合うとは、具体的にどうすることか。支え合う範囲をどのように考えるのか。支え合わないほうがよいこともあるのではないか。もしかしたら「支え合わない学級」のほうが、子どもたちを強くするかもしれないのでは。
世の中のスローガンも同じです。「いのちの教育」全くわからないですね。
命の教育を実践している学校に入ると、花壇の花がかれていることがあります。教室に花の枯れたままの植木鉢が目につきます。
飼育箱の中の虫が死んで干からびています。
それでも校舎の目標だけが立派に場所を占有しています。
学級のめあては、子どもたちと一か月生活してから、五月の連休前かそのあとぐらいに子どもたちの意見を交えながら決定します。子どもたちの実態が把握できないのに、どうしてめあてが設定できるのでしょうか。そして、学校によっては、新学期一週間で学級経営案を提出させるところがあります。
子どもの生活、学習面、友だち関係を把握するのに4月いっぱいの時間をかけます。
学級経営案は、4月末ぐらいでいいのではないでしょうか。
できることなら、5月の連休のときにゆっくりと考えたいものです。
当番活動は、その日から必要な仕事ですから、給食、清掃当番ぐらい決めておきます。
その場合も、子どもたちは前の学級の習慣を持ち出してきます。当番についても、経験の内容が異なっています。
実は、ここがが大切です。
この習慣を最初から否定してはいけません。
「新しい学級には、新しいやり方があります」と、先生が子どもたちに話すと、子どもたちにとって、今までの学級生活経験が否定されたように感じます。これは、学習の仕方についても同じです。
経験を否定されることは、子どもたちにとって好きだった前担任を否定されることになりますから、今の担任には、あまりよい印象を持たなくなります。
だから、4月は子どもの側にたってゆっくり準備をしていきます。
ゆっくりと清掃活動をどのようにすれば効率的に美しくできるかを子どもたちとともにつくり上げていきます。
係活動、子どもたちは、すぐに決めたがります。
係とは何かということを問い直す必要があります。
係を決めるのも急ぎません。係についても、あとで詳しく説明します。
子どもたちが学級の友だちや雰囲気を知ってから、4月の終わり頃に決定します。給食当番がなかったら不便ですが、係がなくても学級は動いていきます。
特別活動としての指導があるからという意見もありますが、指導の前に診察が必要です。
要するに、先生は、子どもたちの実態を把握してから、学級の組織化を進めてください。
観察➡診断➡治療の手順です。
いきなり、子どもたちを先生の理想の世界にあてはめることのないようにしましょう。進級したときの先生の気持ちは高揚気味ですので、押さえて押さえて冷静になりましょう。
「見る」ではなく「観る」(くわしく観察)の目で過ごしましょう。
やがて「診る」に変わっていきます。