教育随想(授業づくり・集団づくり・児童理解)

実践、反省、さらに実践・・・

子供たちを相手にして、悩んだり迷ったりしている先生に読んでいただきたいと思っています。
迷うことが、悩むことが先生の良心であり、最も大切な能力ではないのでしょうか。
 わかったことよりわからないこと、できたことよりできなかったことに 心を向けていく先生は 素敵だと思います。

教育随想 115回   教育現場に はたらくことを入れよう

算数ができること、雑巾掛けが上手なこと、どちらが上ですか。
掃除が上手にできること、計算が得意なのとではどうですか。
漢字をよく知っていること、友達にやさしいことではどうですか。


勉強と生活に関わることを比較すると一瞬、躊躇しますね。
学校は、教室は、どこまでも勉強できる子が優位の社会です。
職員室の先生方の話の中に「あの子はどんな子ですか」とたずねると「勉強がよくできていい子です」「やさしい子だけど勉強は今一ですね」という答えが返ってきます。
懇談会の保護者の質問も「勉強はどうでしょうか。うちの子、ついていってますか」などの質問があります。


上の質問を子どもたちにぶつけてみるとおもしろいですよ。
「計算ができるのと雑巾掛けが上手なのと、どちらが上ですか」という質問です。子どもたちはそれぞれ考えて言います。
「雑巾掛けはできなくても困らないけど計算はできないと困るよ」
「雑巾掛けも大切なことだよね」
迷います。


指導者はどうでしょうか。
上のすべてのことを同等にみることができるでしょうか。
計算はテストがあるけど雑巾掛けにはないから、受験の時には必要はないという言葉も聞かれました。


私は、子どもたちの生活に「はたらく」という活動が少なくなっていると思います。
からだを動かして、汗をかいて苦しい思いをすることが、子どもたちの精神的な成長に必要であると考えます。
家庭の中から、風呂、トイレ、玄関など、子どもたちが掃除することが少なくなってきました。家族の一員であることは、家族のために自分も働くことだと思います。


学校で「はたらく」活動は、清掃と給食当番です。
特に、清掃活動は大切にしたい活動です。
からだを動かすことで、今までわからなかったこと、見えなかったことが見えるようになります。


しかし、子どもたちにいきなり、はたらこうと言っても、「めんどうや」という声が返ってきます。
だから、目的と時間を決めて、できるだけ短時間で活動するようにします。


教室なら10分です。
もっと時間がいるとは思いますが、最初のうちは短い時間のほうが集中できます。
10分で一度切ります。
そして、あと何分必要かを予想して再び活動します。
もちろん、活動の後、全員で掃除の美化点検をします。
短い時間で効率よくするためには、分業が必要です。
子どもたちの掃除を見ていると重なリあって活動しています。
徹底的に分業することを目的にします。
そのようにしていくうちに、教室の清掃時間がどのくらい必要かがわかるようになってきます。


掃除そのものを楽しめるように指導していくことが望ましいですね。
時間を設定することで集中が生まれます。
点検することで、掃除の方法を振り返ります。


そして、次のように子どもたちに言います。
「はたらく」とは「はた」を「らく(楽)」にすることなんだよ。
周りの人を快適にすることが「はたらく」ということでもあります。
このように「はたらく」ことの大切な意味を考えさせたいものです。


実は、教室をきれいにすることが目的ではなく、自分の体を動かしているそのものの楽しさが目的なのです。
「行ずる」ことが大切です。


頭を働かせることも大切ですが、からだをしっかりと動かすことも同じくらい大切であると思います。

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