教育随想(授業づくり・集団づくり・児童理解)

実践、反省、さらに実践・・・

子供たちを相手にして、悩んだり迷ったりしている先生に読んでいただきたいと思っています。
迷うことが、悩むことが先生の良心であり、最も大切な能力ではないのでしょうか。
 わかったことよりわからないこと、できたことよりできなかったことに 心を向けていく先生は 素敵だと思います。

教育随想 18回 子どもたちの「事実」を集めることから 子どもの「真実」を

児童資料や保健資料、指導要録などが引き継がれます。
子どもたちの指導にあたって必要なものですが、取り扱い方によっては、これからの指導に大きく影響します。


指導要録。
前学年の担任が子どもの学習と生活、行動の特徴について明記しています。
これは、前の担任の目を通してかかれたもので、子どもの全体像ではありません。子どもに出会う前に閲覧してしまうと、子どもに対する先入観をもつことになります。


前担任の話。
よく担任引継のとき、問題になる子についての説明があります。
危機管理上(暴力など)、必要なことはありますが、これも前の担任の目に映った子どもの姿です。
「あの子はねえ、手こずりましたよ」
・・・あなたが手こずったのであって、子どもが一方的に悪いわけではない。


先生方は、まず、自分の感覚、観察を信じるべきです。
一ヶ月、子どもの観察を行った上で、要録などの資料を読みます。
そして、要録の記載事項と自分の観察が違っている場合を問題にします。
「どうして、食い違っているのか」が課題になります。


反対に、子どもに会う前に真っ先に頭に入れておかなければならない事項もあります。
それは保健に関する資料です。
子どもの持病や過去の病歴です。事故やけがの履歴もチェックします。
糖尿病、脳の手術、骨折、精神的な病いなども調べていきます。
保健の先生との対話が必要です。


 さらに、今までのその子の保健室にきた内容と回数です。
頭痛、腹痛、けがです。保健室に記録があります。過去1年分の記録を読みます。子どもによっては、一年生からの記録を見ます。


頭痛も腹痛も精神的なものとの関連があるので、頻度の高い曜日、月を調べます。特に、腹痛よりも頭痛は精神的に重い場合があります。
いじめ等で保健室が駆け込み寺のような存在になっている子どももいます。


持病をもっている子どもについては、担任発表と同時に家庭訪問をして、保護者から病状とその対応について聞いておきます。子どもの保健については、早すぎるということはありません。命に関わることもあるからです。アレルギーや糖尿病です。


私が糖尿病の子どもを担任したときに、昼食前、空腹になると意識が朦朧とすることがありました。糖分補給をすれば回復します。
このような子どもは、保護者との連絡を密にするために、お互いに携帯電話で連絡できるようにします。
精神的にはトラウマです。過去に親しい人を失ったり、大きな事故にあったりした経験がある子どもがいます。水難事故にあった子どもは、水を極度に恐がります。


子どもにとって、負の情報が入りにくいときがあります。保護者は、新しい担任に対して、子どものマイナスになるようなことを言わないようにします。担任に先入観を持たれることを避けるためです。当然のことですね。


子どもの観察記録、カルテが必要です。
医者のカルテのようなものでいいと思います。くわしい項目で記録したこともありますが、日常に追われてなかなか続かないです。
 三色ボールペンを使って、「観察事実は黒色」「所見は青色」「疑問は赤」というように区別します。カルテの形式は観察内容によって月ごとに変わります。


どこでも簡単にメモできる座席表はとても役にたちました。
教室の子ども座席の位置を教卓からみた図をかきます。それぞれの机の枠内にメモします。B5の用紙に両面印刷しておきます。提出物のチェックにも使います。あとで、カルテに記入します。座席表には、一項目一枚を使います。印刷の失敗した用紙の裏を使うと気軽に使えます。


座席表を使う例として次のようなものがあります。
新学期、始業式の時に出会いますね。
子ども一人一人に自分の名前を言わせます。そのときに、「大きな声○」小さな声△」というように記号で記入します。「元気さ」「明るさ」などの項目もいれることがあります。
自分の子どもに対する印象を記録しておきます。
ほかに「発言の有無」「顔色」「服の色」なども項目に入れることもあります。
子どもの小さな事実の記録を重ねていくことで、子どもの全体像が少しずつ見えてくることがあります。
ただし、子どもの事実であっても子どもの真実ではありません。
一部の事実を知って子どもがわかったような気になることこそ先生の驕りです。


子どもに出会う前の仕事なのに結構いろいろありますね。
担任の仕事の半分は4月にあります。だから、4月という月は、最も苦しい時でもあります。
花を育てるときの土づくりの段階です。
植物が根付いたら、あとは、彼らの自力で成長していきます。
土づくりは、植物の生命線です。

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