教育随想17回 4月は 先生のお試し期間です
担任紹介のあと、教室に入ります。
この時は、先生も子どもたちもなんとも言えない新鮮な気持ちになります。
わくわく感とほどよい緊張感がわいてきます。
お互いによく知らない者同士のお見合いなものでしょうか。
子どもたちは「どんな先生かな」と不安と期待をもって先生を見守っています。
子どもは先生の言葉や何気ない振舞いの中に先生を瞬時に判断していく能力を持っています。
子どもたちの感覚は素晴らしいものです。
先生の服装、センス、歩き方、言葉づかい、表情の変化などすべてを観察しています。
緊張しますねえ、どうしても少しはよく見せようとしたいですが、ずくにぼろがでますので、無理をしないようにします。
私は私であり、私でしかないわけですから・・・。
子ども一人ひとりが先生と視線を合わせようとします。
自分は先生に意識されている、意識の中に入っているかどうかを確かめます。
先生と視線が少しでも合うとうれしいのです。
全体の子どもたちに話しかけるときは、一人一人の子どもと目を合わせるようにしします。目の中に入れるようにします。
あの子と目でコンタクトができたという思いが必要です。
これは結構難しいのです。
左右両隅の子どもを落としてしまいがちです。
言葉で語るのではなくまなざしを共有できるようにします。
共有といっても、また、難しいですね、
言葉ではなく目で気持ちを伝えるようにします。
一人ひとりの子どもたちに「いい子だね」「よろしく」という気持ちを目で伝えます。
中には、先生と視線が合うと、さっと視線を外す子どもがいます。
一つは、はずかしがりやの子どもです。
圧迫感を感じる子です。でも、目を合わせてほしいという気持ちを持っています。
相手が目をはずしてもじっと視線を送ります。
すると、また、子どもの方から視線を送ってきます。
もう一つは、子どもなりに今まで先生たちに不満を持ってきた子です。
希望を失っている子どもです。
でも、そんな彼らにしっかりとまなざしを共有できるようにします。
視線を外すのは、子どもなりの照れです。
本当はかまってもらいたいのですね。
ところが先生は、その子に対して「少しひねくれているかな」という印象を持つことがあります。
そうではないです。
先生の気配り、配慮を渇望している子どもたちです。
前学年で、蚊帳の外に置かれた子どもたちほど強く新しい先生を意識しています。
「先生、先生」と声をかけて寄ってくるのは先生という肩書きがあるからです。
その肩書きをとってしまえば、ただのおじさん、おにいさん、お姉さんです。
子どもたちは、先生の肩書きに近づくのではなく、その肩書きに隠されている人間、人柄に心を引かれていきます。
4月は、先生にとって子どもの観察期間ですが、子どもにとっては、先生のお試し期間です。
子どもたちは、一年間、自分の役に立つのか、自分の味方になってくれるのかを確かめるめるために、先生を注意深く探ってきます。
先生は、30人の子どもたちのまなざしにさらされています。
やがて、一週間ほどたつと、子どもたちは、家に帰って親に話しています。
「ねえ、おかあさん、今度の先生はねえ・・・」
このあとは、最初の家庭訪問で聞いてみてください。